選挙
戦うべきところで戦わない谷垣禎一が「首相になれなかった自民党総裁」となる可能性
谷垣総裁の再選はあるのか〔PHOTO〕gettyimages

  「物事を推し進めていく力のない政権が、選挙をやれば政権交代が十分起こりうる状況の中で、補正(予算)までというのは貪りだと思います。特例公債法(案)でやるのは貪りですよ」(20日、BS日テレで)

 自民党総裁・谷垣禎一は「貪り」という激しい表現を繰り返して使い、首相・野田佳彦を非難した。貪るというのは「欲深く、際限なく物を欲しがること」(「広辞苑」)。また、谷垣側近の元厚生労働相・川崎二郎は21日、消費増税法案の成立前に内閣不信任案を提出することに言及、「(衆院選は)9月30日投票(になるとの想定)で準備している」と述べた。

 今国会での衆院解散はない、との認識が与野党間に広がる中で、あえて宣戦布告するのは、解散が遠退くとともに、9月の自民党総裁選での再選も危うくなってきていることへの焦りの表れと言える。

勝負をかけることが苦手な政治家

 今になってこれほど攻撃的になるのであれば、なぜもっと早く手を打たなかったのか。谷垣が解散に追い込むチャンスは少なくとも二度あった。

 失敗はまず、6月15日に民主、自民、公明3党で消費増税を柱とする社会保障と税の一体改革法案の修正で合意してしまったことだ。この日、野田と谷垣との2度の電話会談が行われ、ここで谷垣が態度を軟化したことが合意につながった。「決める政治」との視点で見れば一歩前進であっても、谷垣と副総裁・大島理森が強く要求してきた衆院解散・総選挙時期の確約はまったく得られなかった。

  「我々が信頼してきた谷垣さん、大島さんが党内の権力闘争で、条件を付けずに消費増税法案の成立を図ろうとした森喜朗元首相、古賀誠元幹事長、青木幹雄元参院議員会長らに負けたということ。あそこで突っ張っていれば解散・総選挙に持ち込めたのに・・・」

 公明党幹部はこうぼやく。3党合意によって、公明党・創価学会は3月中旬から本格化させた選挙準備を6月で中断。今月から消費増税がなぜ必要か、公明党が何を勝ち取ったのか、という学習会を全国でこまめに開くという戦術変更を強いられている。

 3党が合意しても、まだ戦いようはあった。6月21日の会期切れ時点で、79日間の延長を議決する際、起立採決を安易に受け入れてしまったことだ。これを記名採決に切り替えていれば、民主党の分裂は早まっただけでなく、当時の情勢なら民主党内からもっと多くの造反者が出て、会期延長を否決することも可能だった。

 実際、この日、首相官邸は記名採決の可能性が出てきたことに一時、震撼した。あの慌てぶりを見れば、少なくとも解散の確約を求めて、野田を揺さぶることはできた。

 衆院段階での合意を主導した元幹事長・伊吹文明は「ドラマは参院で始まる」と言う。しかし、衆院で賛成して参院で否決することなどできるはずもない。二度も空振り三振を喫して、参院での一体改革法案採決での反対や採決前の内閣不信任案提出の構えを見せて、逆転満塁ホームランを狙うというのには無理がある。

 そもそも、「イブキング」と呼ばれるようになった伊吹が目立ち、谷垣の存在感はかすむ。谷垣はこうした勝負どころで勝負をかけることが苦手な政治家なのではないか。

 2000年11月の「加藤の乱」で、内閣不信任案採決が行われる衆院本会議場に向かおうとした元幹事長・加藤紘一に「あなたは大将なんだから!」と言って泣きすがった場面を思い出す。加藤は谷垣の必死の説得を受け入れ、本会議を欠席したことによって挫折、政治生命を事実上失った。

 戦うべきところで戦わないと政治家として致命傷になる。谷垣は9日の衆院予算委員会で野田と直接対決したが、質問の持ち時間45分を15分も残して終了。まるでボクシングの無気力試合のようだった。

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