ドイツ
民主化に動きはじめたミャンマーと、イギリスに翻弄され続けたアウンサンスーチー氏の人生
ヒラリー・クリントン氏とアウンサンスーチー氏〔PHOTO〕gettyimages

 ミャンマー(ビルマ)のアウンサンスーチーが、最近しきりにドイツのニュースに登場する。4月1日に補欠選挙で国会議員に当選し、20数年ぶりに政治家として蘇ったからだ。

 去年の暮れから、欧米各国の大物のミャンマー参りが続く。アメリカのヒラリー・クリントン国務長官、バンキムン国連総長、EUのアシュトン外相、もちろんドイツや日本からも続々。彼らはもちろんテイン・セイン大統領とも会談しているのだが、ハイライトとして報道されるのは、アウンサンスーチー氏との会談ばかりだ。

 それにしても、ヒラリー・クリントンとアウンサンスーチー両氏の邂逅の映像には、ビックリ仰天してしまった。ぴったりと寄り添い、肩を抱いて見つめ合い、手を握って、囁くように語りながら、しっとりと歩いていく様子は、生き別れになっていた不遇の姉妹がようやく巡り会えたような、静かながらも感極まった不思議な雰囲気だ。そこには2人の女闘志の姿はまったくない。

 いったい何がどうなっているのか、さっぱりわからない。アメリカが、やおらミャンマーへの経済制裁をかなぐり捨てようとしているのは、何もアウンサンスーチー氏への愛情からではないだろう。クリントン長官、ちょっと演技し過ぎではないか? 

急速に変わりつつあるミャンマー

 欧米諸国は、これ以上交易を渋っていると、ミャンマーの資源の利権を完璧に失いそうで、皆、焦っている。ミャンマーの地下には、石油、天然ガス、タングステン、アヘン、金、銀、銅、ダイアモンド、ルビーと、素晴らしいものがたくさん埋まっている。天然ガスの埋蔵量は世界10位と言われているし、ルビーは世界生産の90%を占める。

 ちなみに、ミャンマーの北部はアヘンの原料となるケシの一大栽培地で、アフガニスタンに次ぐ巨大な麻薬密造地域。黒いビジネスに携わっている人間にとっても、まさに垂涎の的なのだ。7月11日、オバマ政権はようやく経済制裁の一部を解除。利権争奪戦の幕は切って落とされた。

 ここ数年、ミャンマーに大々的に投資しているのが中国とインドだ。中国はエネルギー資源が欲しいので、ミャンマーへの食い込みにはとりわけ熱心。中東から輸入する石油だって、ミャンマーの港からパイプラインで直接中国に流し込めば、狭苦しいマラッカ海峡を通過する必要がないので、大変都合がいい。というわけで、すでに中国とインドは、ミャンマーに大きな影響を行使するに至っている。経済制裁をしてしまったばかりに、欧米諸国は、それを指をくわえて見ていたのだった。

 日本は経済制裁には加わっていなかったが、アメリカに遠慮をして投資を控えていた。引き揚げた企業も多かったが、今、再びスイッチが入って活気づいている。日本とミャンマーの縁は深く、以前はODAの80%が日本からのものだった。これから早々とその関係が復活する模様だ。

 さて、何故、欧米諸国がミャンマーに経済制裁を行っていたかと言うと、現在の軍事政権に圧力をかけるためだった。1990年に行われたミャンマー総選挙のおり、アウンサンスーチー氏の率いるNLD党(国民民主連盟)の勢いがあまりにも強大になったため、当時の軍事政権がアウンサンスーチー氏を自宅に軟禁してしまう。

 軍政の心配は的中し、NLDは選挙に大勝するのだが、政府は権力の移譲を拒んだ。それが欧米諸国に批難され、その後の経済制裁や、アウンサンスーチー氏のノーベル賞平和賞受賞につながっていく。経済制裁により、元々最貧国の1つだったミャンマーはさらに発展が遅れ、現在、同国の賃金水準は、ベトナムの3分の1、中国の5分の1とも言われている。

 その制裁がついに解除されたのだ。今後は欧米諸国の資本が投下され、まもなく石油、ガスのみならず、林業などにおいても熾烈な国際競争が始まるだろう。ミャンマーは、急速に変わっていくはずだ。

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