サッカー
二宮寿朗「アジアに必要なレフェリーのレベルアップ」

 話はちょっと古くなってしまうが、6月12日に行なわれたブラジルW杯アジア地区最終予選のオーストラリア―日本戦で、クローズアップされたのが主審の笛だった。この日担当したサウジアラビア人のカリル・アルガムディ主審は明らかに冷静さを欠いていた。

アルガムディ氏に見るアジアの現状

 後半11分、途中出場のマーク・ミリガンに2枚目のイエローカードを提示して退場させたあたりから、一気に雲行きが怪しくなった。そもそもレッドカードを出すまでに時間が掛かったことからも、2枚目と理解してイエローを提示していないように見えた。退場を意味する2枚目のイエローを出すほどのファウルではなかったのは、誰の目から見ても明らかだった。

 これが主審の頭にあったからこそ、相手の体に軽く手を回しただけの内田篤人はPKを取られ、オフサイドポジションから戻ろうとした選手とぶつかった栗原勇蔵は2枚目のイエローカードを出されたのだろう。終了間際に本田圭佑がFKを蹴らせてもらえなかったシーンも然りだ。“アウェーの笛”というよりも、ミリガンを退場させてしまった後悔を秘めたレフェリングであったように思えてならなかった。

 記者席から眺めてみても、オーストラリアと日本は素晴らしいファイトをしていた。「これが最終予選の戦いなんだ」と、観ている側も思わず力が入ったものだ。それだけに試合途中からレフェリーの笛ばかりが目立ってしまったことは残念でならなかった。

 アルガムディ氏は2010年の南アフリカW杯、グループリーグのスイス―チリ戦で9枚のイエローカードを乱発するなど試合をコントロールできず物議を醸したレフェリーである。昨年のアジアカップ準決勝の日本―韓国戦でも笛を吹き、イエローカード6枚、PK2回(両チームに1回ずつ)と主審の存在が目立った試合になっている。不安定なレフェリングで、荒れた試合を演出したと言っても過言ではあるまい。

 しかし、彼は昨年のAFC(アジアサッカー連盟)最優秀審判にノミネートされるなど、アジアのなかではトップレベルのレフェリーとして認知されてきた。“走れる審判”として西アジアでの評価は高いのだという。

 アジアには4年連続でAFC最優秀審判に選ばれているウズベキスタン人のラフシャン・イルマトフ氏がいる。日本絡みでは11年アジア杯のサウジアラビア戦、決勝のオーストラリア戦を担当。今年6月にはW杯アジア最終予選のオマーン戦で笛を吹いているが、いずれも円滑に試合を進めている。また、彼は南アフリカW杯の準決勝オランダーウルグアイ戦でも主審を務めた。その他、南アW杯では日本の西村雄一氏も4試合で笛を吹き、準々決勝オランダ―ブラジル戦を任されたことは記憶に新しい。

 イルマトフ氏や西村氏は先のW杯で高い評価を受けた。その一方で、アルガムディ氏のW杯でのレフェリングはメディアから批判された。彼の名誉を傷つけるつもりもなければ、攻撃するつもりも毛頭ない。筆者が言いたいのはアジアのレフェリーで評価を上げているのはまだまだ少数にすぎず、AFCのレフェリー全体のレベルが上がっているとはまだまだ言い難いということだ。