これからの日本にはもっと多様な「キャリア」があっていい ~「シーラカンス食堂」に見る若者たちの「雇われない生き方」

シーラカンス食堂の創業メンバー。左から小林新也さん、吉岡直哉さん、松尾圭亮さん(筆者撮影)

 日本経済新聞が7月16日、1面トップで「働けない若者の危機」と題する記事を掲載した。今後連載として続くようである。その冒頭にこうある。

「日本はいつの間にか若者に仕事を与えられない国になってしまった。学校を出た24歳以下の10人に1人が失業し、2人はアルバイトなど不安定な仕事で日々をやり過ごす。今日の競争力は低下し、社会保障の担い手が足りなくなる・・・」

 今の日本の厳しい雇用環境の中では新卒として大企業に就職するのは難しい。こうした状況を反映してか、「雇われない生き方」を目指す若者が増えているように感じる。

 その象徴的な存在が、昨年12月、東証マザーズに上場した掲載料不要の求人サイトを運営する「リブセンス」の村上太一社長だろう。早稲田大学在学中に起業し、25歳での上場が最年少上場記録を塗り替えたため、マスコミでも取り上げられ、有名になった。

実家の物置部屋を改装して事務所として活用

 一方、こちらはまだ無名だが、兵庫県小野市でも大学を出たばかりの若者3人が2011年3月、合同会社「シーラカンス食堂」(資本金250万円)を起業、やはり「雇われない生き方」を目指している。

 ユニークな社名からは想像もつかないが、デザイン会社である。デザインスタジオを運営したり、自社でデザインした商品を大企業と連携して開発したりする。「シーラカンス」とは古代ギリシャ語で、「からっぽ&脊椎」を意味するという。からっぽのところに若い力で何かを埋め込み、次世代に何かを繋ぐ骨のような存在でありたい、との思いから命名した。「食堂」と付けたのは、古き良き温かみのある集いの場に自然と仲間が集まる、といったことをイメージしたからだ。

 中心人物は代表社員(社長)を務める小林新也さん(25)。大阪芸術大学デザイン学科でプロダクトデザインを学んだ。在学中からフリーデザイナー的に活動し、企業と連携して繊維素材を使った「枯山水」を作って芸術祭に出展するなど、かねてから独立を意識してきた。

事務所で作業する小林新也さん(筆者撮影)

 実家は小野市内でふすまなどを建てつける表具店。卒業後、すぐに故郷で起業の準備に入った。実家の2階の物置部屋を改装し、事務所として活用している。小野市は「そろばん」の日本有数の産地だが、地場産業は衰退の一途。事務所近くの商店街もシャッターの降りた店舗が目立ち、さびれている。小林さんは「デザインの力を使って地域の問題解決に取り組みたい」と考えたのだ。

 すでに実績もある。閉鎖したそろばん工場からそろばんの珠を譲り受け、しゃれた玩具やマッサージ器などを商品化した。このほかにも創業約200年の島根県の石州瓦メーカーと協力して、瓦を使った食器開発をプロデュースした。小野市商店街内の休憩所をおしゃれなカフェに改装し、一部をそこに展示している。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら