白洲信哉 第3回 「あの生暖かい感触が忘れられない---祖母・白洲正子がベッドのなかから取り出した徳利」

島地 勝彦 プロフィール

シマジ 信哉さんの舌の感覚なんて、先代、先々代の人たちがうまいものを食べつくしてきた結果、作り上げられたものでしょう?

白洲 いやいや、ただの意地汚い食いしん坊です。シマジさんこそ、いい舌をしてるんじゃないですか。

シマジ いやいや、おれの舌は単なる"孔雀の舌"ってところかな。

瀬尾 クジャクの舌ってなんですか?

立木 それって、開高さんの食エッセイのタイトルだよな。

シマジ これは今東光大僧正に教えてもらったんだけど、インドの孔雀はあんなに美しいのに、非常に悪食で毒蛇でも何でも食べる。だからおれのように、何でも怪しいものを食べる悪食ののことを、そう呼ぶんだそうだ。仏教の教えにも関係があるらしいけど、詳しいことはわからない。

 それから4~5年の時が流れて、開高さんと出会ったとき、「シマジくん、"孔雀の舌"っていう言葉の意味は知っとるか?」と文豪に訊かれたので、大僧正に教わった通りに答えたら、えらく感心されたことがあったね。

立木 シマジは大僧正に教わったとは決して言わなかったな。

シマジ 当然です。

白洲 開高さんもグルメでしたでしょう?

シマジ いや、グルメというよりはグルマンでした。

瀬尾 それはどう違うんですか?