白洲信哉 第3回 「あの生暖かい感触が忘れられない---祖母・白洲正子がベッドのなかから取り出した徳利」

2012年07月18日(水) 島地 勝彦

撮影:立木義浩

第2回はこちらをご覧ください。

シマジ こうして話していると信哉さんのお顔は白洲次郎似ですが、こころは白洲正子ですね。

白洲 個人的にも正子とは多くの時間をともにしました。晩年は鶴川の白洲家で一緒に住んでおりましたし、また、正子が取材旅行に行くときには、ぼくがお抱え運転手になっていました。不思議なことに、正子は新幹線で旅行しているときも、わたしの運転で旅しているときも、道中眠ったことがありませんでした。

 ずっと外の景色を眺めていて、ちょっと興味が湧くと、「信哉、ちょっとあそこへ寄ってちょうだい」と古い寺や社を訪れるのです。取材の約束もないのに、寺の係の人に「白洲正子ざんす」と名のって、ずかずかと入っていくんです。向こうは正子の迫力に圧倒されてタジタジでした。

シマジ さすがは樺山家のお嬢さまですね。あのお洒落な格好で、しかもあの威厳ある顔で迫られたら相手もノーとは言えませんよ。

白洲 あるとき、旅先で「10万円下ろしてきてちょうだい」とキャッシュカードを渡されたのですが、銀行に行ってみたら残金が6万円ほどしか残っていないこともありました。

シマジ さすがは一流の浪費家ですね。美の世界にはお金を使わないと見えてこないものがたくさんありますからね。

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