官々愕々
秋の選挙に向け「踏み絵」を用意せよ

 7月2日、小沢グループが民主党に離党届を提出、翌3日にはこれに対する処分が決まり、民主党がようやく分裂した。民主党の長年の課題である小沢vs.反小沢の争いに終止符が打たれ、同じ政党内で政策が全く違うという事態が解消する。しかし、政治がわかりやすくなるかというとそうではない。年初から指摘し続けているとおり、対立しているはずの民主と自民・公明が、消費増税とバラマキ政策で完全に歩調を揃えてしまい、今度は政党の違いがわからなくなっているからだ。

 民自公は基本的に財務省中心の官僚主導路線で、政策的には守旧派でバラマキによる既得権との癒着路線だから、財務省や既得権グループが本気で嫌がる大きな改革はできない。経済については、消費増税で景気が良くなると妄信する、財務省の究極の経済音痴路線に乗っている。

 対する小沢グループが改革派ならわかりやすいのだが、どうもそうは見えない。民主党政権成立後、当時幹事長だった小沢氏は陳情窓口を自らの下に一元化したことに表れているとおり、小沢氏はもともと団体を取りこんで行く政治手法を得意とする。TPP反対者が多いことでもわかるとおり、結局守旧派のバラマキ政党になる可能性が高い。

 国民は次の総選挙でどの政党を選べばよいのか途方に暮れている。小沢グループと橋下、石原、河村各氏らの連携が取りざたされるが、もう何が何だかわからなくなる。今こそわかりやすい具体的な政策に基づく投票の基準が必要になっている。総選挙のための「踏み絵」だ。その代表が公務員改革、TPP、そして規制改革、さらに原発政策だろう。

 野田政権は、当初国会会期中(6月21日)としていたTPP参加の決断を先送りした。一方の自民党もTPPについての態度は曖昧なままだ。

 規制改革については、今月中にまとまる政府の「日本再生戦略」(成長戦略)にどれくらいの大玉が入るかが注目されてきた。ところが、3日の行政刷新会議でまとめられた41項目の規制改革方針の内容は、官僚主導の小出し改革の列挙にとどまってしまった。官僚主導なので予想されたことだが、医師会や農協などが嫌がる改革は、影も形も見えない。

 公務員改革では、消費税が上がる2014年4月には公務員給与削減は終わり、7.8%分上がって元通りになる。そして、民間よりも400万円高いという人事院のお手盛り調査に基づいた(経団連調査による大企業平均に比べると実は500万円以上高い)退職金引き下げも、今年はやらないはずだ。何故なら、定年を迎えた財務省事務次官が今年度末までに退職の予定だからだ。

 そこで、秋の総選挙に向けた「踏み絵」を考えた。行革では、退職金500万円引き下げを今年度退職者から即時適用、公務員給与7.8%引き下げの2年間限定を恒久措置にするのが一番わかりやすい。

 次に、以前から提唱していることだが、日本経済の再生のために「既得権と闘う成長戦略」として、TPP参加、農業・医療への株式会社参入、農協への独禁法適用除外廃止、減反廃止、小規模兼業農家への戸別所得補償廃止、混合診療の解禁、2030年までの原発ゼロと原発予算全額の再生可能エネルギー向け予算への転換などがわかりやすい対立軸になる。

 これらを旗印に第三極を形成すれば、国民には真の改革派かどうか明確に見分けがつくだろう。大阪維新の会やみんなの党、そして既成政党の改革派の政治家はこの踏み絵にどう答えるだろうか。

「週刊現代」2012年7月21・28日号より

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 福島第一原発の事故で原発の恐ろしさに目覚めた人、原子力ムラの企みと横暴に怒りを感じた人、そして「脱原発」を目指す多くの人に、真実を伝え、考える道筋を示し、そして希望を与える「魂のメッセージ」。