マスコミにはわからない数字を読み解けば一目瞭然。野田政権の「日本再生戦略」は共産国の「計画経済」と同じ絵に描いた餅


政府は7月11日、「日本再生戦略」の原案を公表した。2020年までに環境や医療、観光など11の戦略分野で38の重点施策を掲げ、630万人の雇用を創るという政権の目玉となる成長戦略だ。

これについて、新聞各紙が社説などで、次のように解説している。「日本再生戦略 目標達成へ政策を絞り込め」(13日付け読売新聞)、「医療・環境などで雇用創出600万人 日本再生戦略原案」(12日付け日経新聞)、「「再生戦略」原案 実効性あるプランなのか」(13日付け産経新聞)、「日本再生戦略 官僚色がくっきりだ」(14日付け中日新聞)などだ。

各紙、主張が違っているようにみえるが、その中身の素材は驚くほど似ている。「官僚による絵に描いた餅」ということだ。官僚に対する信頼度やネタ元をどの程度依存しているかで、主張のニュアンスが異なっているように筆者には見えた。

問題の本質は、日本型産業政策の是非になる。この点は、他のコラムで書いたので、各紙が前提としている「絵に描いた餅」を数量的にしっかりと示そう。

平均年収260万人の成長産業?

 実は数量的に問題点を示せないというのはマスコミの弱点である。これだけ数字が記載されている資料が山盛りなのだから、その矛盾を示せばいいものを、数字に弱いマスコミはできない。かつて筆者が官邸にいたとき、マスコミ対策には数字をたくさん出せといわれた。マスコミは役所の出した数字を盲信的に、そのまま受け入れそのまま書くからだ。

マスコミにマクロ経済の理解、知識がないことも問題だ。竹中平蔵氏が14日のツイッターで興味深いことをつぶやいていた。

 「元大企業幹部、元高級官僚らが出席する会で経済の議論をした。しばしば経験することだが、こうした人たちのマクロ経済に対する認識の低さに驚く。マネーとデフレの関係、GDPと税収の関係に対する無理解・・。日本がダメになる訳だ。社会の経済リテラシーを高めることが、日本経済再生の必要条件だ。」

 マスコミはこうした人を先生扱いし、彼らからの話を記事にしているわけだから、マクロ経済がわからないのは当然だろう。
 

 原案では、いろいろな各省の施策が羅列されている。筆者は、官僚の書いたものを理由なしで悪いとか間違っているとか決めつけない。消費税についても彼らが、社会保障目的税化した国はないこと、分権の進んだ国では地方の一般財源になっている国が多いことなど税制にかかわる財務省官僚ならば知っていることを国民に隠し、社会保障目的税化し国税に固定化しようとする、今回の消費税増税に反対してきたわけで、いつもきちんとその理論や根拠を示して官僚の意見を批判している。ちなみにガチンコで議論するのは厭わないが、なぜか官僚サイドのほうが避けている。

さて日本再生戦略の原案のうち、グリーン成長戦略と題し2020年までの目標として「50兆円超の環境関連新規市場、140万人の環境分野の新規雇用」、ライフ成長戦略と題し2020年までの目標として「医療・介護・健康関連サービスの需要に見合った産業育成と雇用の創出:新市場約50兆円、新規雇用284万人」が、絵に描いた餅の典型例だろう。

まず、上記の「市場規模」というのが何を表わすのか。ひとつは付加価値ベース、もうひとつは売上高ベースだ。売上高ベースとすると、かなりシャビーな成長戦略だ。一般的な産業の人件費売上高比率は15%。だから50兆円市場といっても7.5兆円だ。医療関係で284万人の新規雇用とすると彼らの平均年収は260万円ということになり、これでは成長産業と言えないだろう。

付加価値ベースではどうか。環境省の地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ検討会では、温室効果ガス対策のために必要な国内投資額が、2020年で33兆円と推計されている。また、2020年における海外需要つまり環境保全技術の輸出分12兆円とされて、合計の付加価値ベースで45兆円と新市場の9割を占めるとされている。グリーン成長戦略はその数字をもってきただけだ。

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