猪子寿之×安藤美冬 【第1回】
ランドセルで高校に通った伝説を持つ「異色の天才」猪子寿之はどうやってつくられたのか

安藤 美冬
猪子寿之さん(チームラボ株式会社代表取締役)と安藤美冬さん(spree代表取締役/フリーランス)。チームラボでは8月12日(日)まで、『We are the Future(藝術超未來)』展を、台湾の台中にある国立台湾美術館DigiArkにて開催しています。

安藤: 猪子さん、こんにちは。今日はよろしくお願いします。これは現代ビジネスでやらせていただく私の連続対談企画『21世紀の歩き方』の記念すべき第1回目で、今回のテーマは「教育」です。

猪子: えっ!? なんで、ぼくと対談で「教育」なの?

安藤: 猪子さんが受けてきた教育や、猪子さんが考える教育論を聞いてみたいからです。ある編集者さんが話していましたよ。「猪子寿之はどうしてあんなにユニークな人格になったんだろう」って・・・。一体、思春期時代、学生時代に奇才、猪子寿之は何を学び、何を考えてきたのか(笑)。つまり広義の意味でどんな「教育」を受けてきたのかは、私だけではなく誰しも気になると思いますよ。

猪子: 別にユニークじゃないよ。いたって普通。

安藤: まあ、変人(失礼)に限ってご自身のことは「普通」だと称するのが世の常ですからね(笑)。また、これは余談なんですけれども、先日、猪子さんは高校生のときにランドセルを背負って登校していた、っていう噂を耳にしまして・・・。

猪子: ちょっと待って、誰から聞きました?

安藤: 猪子さんと同じ高校に通っていたという某女子がそう言っていましたよ。

猪子: ランドセル、背負ってそうだね、ぼくは。

安藤: 「ランドセルで高校に来てましたよ、彼は」って。背負ってたんじゃないですか?

猪子: いや、まったく記憶にないんだけど・・・。背負ってそうだね、確率論的にいうと(笑)。

安藤: 確率論的にね(笑)。背負ってそうですよね(笑)。まぁ、それはさておき、こうした学生時代の知られざるエピソードも含めて色々とお伺いしていきたいと思います。まずは、猪子さんがどういう学校教育を受けてきたのかを聞かせてください。

猪子: 普通です。

安藤: 大学では数学を専攻されていたんですよね?

猪子: はい、計数(工学)ですね。

安藤: 確か、以前に昔から数学がすごく得意だったと話していましたよね。東大の入試でも、英語はサッパリできなかったのに数学だけは全問正解。そのおかげで国内最難関の大学をストレートで合格できたわけで。そういう極端さというか、デコボコした部分に猪子さんらしい才能の片鱗を感じます。

猪子: よくそんな話を・・・。記憶力いいですね。

安藤: 覚えてますよ(笑)。今、猪子さんが手がけている最先端の芸術表現、アートの分野において、ご自身が得意とする計数(数学)は密接な関係がある気がしています。一見、右脳的なものと左脳的なものとして相反するように思えますけれど。その辺のお話も、今のお仕事と絡めて伺ってみたいと思っています。

そもそも猪子さんは、学生時代、親から「勉強しろ」って言われてたんですか? どんな親御さんだったのか、どんな家庭教育を受けたのかをぜひ聞かせてください。

猪子: いや、本当に普通だったんです。

安藤: 猪子さんの「普通」は世間一般で言われる「普通」とは違うんじゃないかと思いますが・・・(笑)。では、通っていた高校はどんな学校だったんですか?

猪子: 県立高校です。県立城東高校という、徳島駅前にある学校に通ってました。

 そうそう、徳島の学校には、入試も総合選抜制度(注:学校間格差の解消を目的として、居住地や学力などによって合格者を学区内の各校に平均的に振り分ける制度)で、クジで行く高校が決まる、という制度がありました。全国でも少ないですよね。いまはさすがにちょっと変わったと思いますけど、僕の時代はまだ・・・。 

安藤: 平等に教育機会を与えるために、入学する高校をクジで決めるんですか? 詳しく聞かせてください。私、そういう制度があるなんて知りませんでした。

猪子:  徳島県内の普通科を希望順に5から6校、書きます。家からの距離も出します。そうすると、どういう仕組みかわからないのですが、その情報をもとに行く高校が割り振られます。つまり、成績優秀な子が第一希望で人気の高校を志望しても、その子はどこか他の高校に回されて、あえて別の成績の子を合格させるんです、全体のレベルを平均化するために。

安藤: すごいですね、それは。

猪子: 昔は、例えば徒競走で順位をつけずにみんな一緒に手をつないでゴールする、みたいなの、ありませんでした? そういうこと、いっぱいあったと思います。

すでに異彩を放っていた徳島の高校生時代

安藤: 猪子さん、中学生のころは、よく勉強してたんですか?

猪子: 中学のときは・・・、普通です。塾にも行ってたし・・・。

安藤: ここでも「普通」と言われちゃいました(笑)。さっき言った同じ高校出身の某女子は、「すごく頭のいい人だった」って言っていましたよ。

猪子: 周りはヤンキーばっかりでしたからね、割り算とか出来ただけで「頭いい!」って言われますよ。

安藤: クジで決められるので、様々なレベルの人たちが一緒に学んでいたんですね。

猪子:いや、大学に進学する人は、全校生徒の半分ぐらいしかいなかったですからね。僕もそんなに成績が良くなくて、正確な数字は忘れましたが、卒業式のときに3年生の一年間の成績順位が出るんですけど、ぼく、たしか40番台でしたからね。

 たとえば、ぼくが46位だったとしたら、45位の子なんか、偏差値50を切る大学に行ってましたからね。少なくとも学校の成績は良くなかったんです。でも、頭よさそうには見えたんですよ。

安藤: 「異彩を放ってた」って聞きましたけど。

猪子: みんな騙されてたんですよ。いつも意味わからないことばっかり言ってたから。

安藤: そのあたりは現在も変わらないようですね(笑)。そしてそんな学校から現役で東大に入るわけですよね?

猪子: そう。そうだけど、そーいう回なの? 今日って。

安藤: そうですよ。教育がテーマですから。言うなれば「猪子寿之のつくられ方」です(笑)。

猪子: そうですか。はい、東大には受かったんです。ぼくは数学とか物理が得意だったんで。学校の成績は良くなかったんですけど。

安藤: そもそもなぜ、東大に行こうと思ったんですか?

猪子: そもそも、まともな大学は東大しかしらなかったんですよ。 

 短い時間にいっぱい問題を解く試験はとても苦手だったんで、ぼく、センター(試験)とか、ぜんぜんダメだったんですよ。さっき数学は得意だって言いましたけど、センターはたしか120点ぐらいしかとれなかったんじゃなかったかなぁ。

安藤: 200点満点で? 

猪子: そう。200点満点の120点じゃ、普通の大学には行けないじゃないですか。

安藤: 長い時間をかけて少ない難問を解く、っていう試験の方が向いていたんですね。

猪子: いや、易しい方がいいんですけど(笑)。でも、たしかに、東大みたいな試験の方が合ってたんでしょうね。もういいじゃないですか、18の頃の話なんて。

安藤: いやいや、そこを是非伺いたいですね。私は猪子さんのライフ・ストーリーに興味があるんです。先の質問に戻りますけれど、どんなご両親に育てられたんですか?

猪子: だから、普通の・・・、ホントに、普通の両親。普通。別に何も言わないし、あんまり興味なかったですね、ぼくに。みんな自分に夢中な家族だったんで。

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