経済の死角

シャープ元幹部が実名で明かす 日本のテレビが韓国製に負けた「本当の理由」

2012年07月17日(火) 週刊現代
週刊現代
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 日本を代表する電機メーカーが軒並み巨額の赤字に陥っている。経営者たちは円高や欧州不況など外部環境のせいにするが、言い訳に過ぎない。トップが舵取りに失敗し、決断を間違えた瞬間があった。

絶頂からあっという間に転落

 '07年に社長となった片山幹雄さんの下で、シャープは大阪・堺市にあった新日鐵の工場跡地に液晶パネルと薄膜太陽電池の超巨大工場を新設しました。

「グリーンフロント堺」と名付けられたこの巨大工場に投じられた資金は、協力会社の分も合わせると実に1兆円。うち3800億円が第10世代と呼ばれる最新鋭の液晶パネル製造工場への投資でした。

 液晶ディスプレイの性能と価格を決定する大きな要因は、いかに大型のパネルを作れるかです。堺工場は、40〜60インチの大型ディスプレイの市場が立ち上がることを予測して建設されたものでした。三重県・亀山工場で成功した、液晶ディスプレイからテレビまで一貫して生産する「垂直統合」モデルを、更に進化させた「究極の垂直統合工場」でした。

 それから4年---。パナソニックにソニー、そして私の古巣であるシャープは、今年、社長交代に踏み切りました。いずれの会社も巨額の赤字に対して責任を取ったものですが、赤字の主な原因は薄型テレビ事業での韓国企業に対する敗北です。

 2011年第4四半期における薄型テレビの収益における世界シェアは、トップが韓国・サムスン電子の26・3%、次いで韓国・LG電子の13・4%。日本勢はソニーが3位の9・8%、4位パナソニック6・9%、5位シャープ5・9%なので、3社合計でサムスン1社に及ばない状況です。

 テレビ事業が苦しいのは日本企業だけではありません。急激な価格低下により多くのメーカーが赤字と言われていますが、このまま競争が進めば韓国勢だけが勝ち残り、日本メーカーは早晩市場から姿を消してしまうかも知れません。

 そうした苦境を反映し、パナソニックの津賀一宏新社長は「もはやテレビは中核事業ではない」とおっしゃいました。

 しかし私はそうは思いません。テレビは、各家庭に最低1台以上は普及し、家族がその前で多くの時間を共有するという他には例のない電気製品です。家電メーカーにとってテレビはこれからもキーとなる製品であり続けるはずで、パソコンやゲームに置き換わるようなものではありません。

 ただ、国内メーカーがそこまで追い込まれているのも事実です。では、なぜ国内メーカーの薄型テレビがほんの数年でこれほどの苦境に陥ったのか。その失敗の本質を探るには、液晶ディスプレイと液晶テレビ、それぞれの敗因について分析しなければなりません。まず第1の液晶ディスプレイでの最大の敗因は、「投資戦略の失敗」に行き着きます。

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