複雑な条件設定は、売り手が買い手を騙すためのもの。必然性のないデリバティブ取引を駆逐しよう!!
前CEOによる金利の不正操作が発覚したバークレイズ

 英国の金融界が大変なことになっている。世界の金融取引の基準金利とも言うべき「Libor」を不正に操作したとして、英大手銀行バークレイズのダイヤモンド前CEOが辞任した。同氏は、他行の関与も示唆しており、さらに、英国の中央銀行であるイングランド銀行の関与も疑われている。

 事件は解明の緒についたばかりで、具体的にどのような操作と、これを利用して利益を得る取引があったのかはまだ分からないが、一連の金利操作には、二種類の問題が絡んでいる。

指標が意図的に操作される可能性を考えるべき

 イングランド銀行の関与が疑われているのは、「情報としての金利」の不正操作だ。リーマンショック後の金融危機の状況下で、銀行の経営が危なくないという情報を発信するために、幾つかの銀行が自行の取引金利を実態よりも低く申告したという問題だ。

 取引金利や株価といった企業にかかわる「取引価格」は、取引関係者が持っている情報と判断を反映するものとして、情報価値が高い。これを操作することで「信用」を補強する、というのは、資本注入等にお金を使わずに効果を上げられる点で、一時の政策アイデアとしては秀逸だったのかもしれないが、不正が露見することで情報自体の信頼性が失われるので、長期的なコストは大きい。中央銀行の関与が明らかになれば当然、責任を取る必要があるだろう。

 また、今回のように派手に露見しなくても、金融取引に関わる当事者達の中には取引の実態と報告される情報が異なることを知る者が多数いることになるので、公表情報が価値を失うのは時間の問題だった。

 金融に関わる人々はプレーヤーも監督者も、Liborや格付けのような「民間の判断で自然に適正に決まるはず」と思われている指標が意図的に操作されたり、その結果信頼性を失ったりする可能性をもっと考えておくべきだろう。取引の基準や資金運用などのルールが、こういった指標に過剰に依存している場合も少なくないからだ。

 もう一つの問題は、取引金利の報告を歪めることでLiborを操作し、デリバティブ取引で利益を得ることが出来た、という事実だ。報道によると、バークレイズの金利報告操作は、この動機から始まったようだ。

 「Liborが幾らになれば、幾らの儲け(損)」といった条件のデリバティブには、他種類・多額のポジションがあったと想像されるが、Liborに「影響を与える方法」があれば、トレーダーがこれを行使しようとしても不思議はない。

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