「表現の自由」は決して世界普遍のものではない---理想と現実の狭間に苦しむグーグルの最新ネット報告書

グーグルには世界各地から削除要求が殺到している。(グーグルGTRホームページより)

 たった半年間で、グーグルには214万件のコピーライト侵害などによる削除要求が集まる。また、各国政府からの公式要求は1000件を超え、ミャンマーの軍事政権は昨年9月に反政府情報を遮断するためにインターネット通信を阻害した---グーグル社が、コーポレート・ガバナンスの一環として発行するレポートには、こんな内容が淡々と綴られている。

 そのレポート名は: Google Transparency Report (以下GTR)

 今回は12年6月18日に2011年下半期の情報が追加された最新版を取り上げ、最近の状況を読み解いてみよう。なお、特に注記がない限り、登場する数字は11年下半期だけのものとご理解頂きたい。

75才のおばあちゃん、誤って光ファイバー切断

 連邦政府の要求により始まったGTRは、2010年4月に発表されて以来、今回で5回目の更新となる。同レポートは大きく以下の4つに分かれる。

① トラフィック: インターネット網における各種障害発生
② 削除要求: グーグル検索リストからの削除
③ 利用者情報の開示要求: グーグル・ユーザーに関する個人情報開示
④ 地図: 各国別の状況をまとめたマップ

 この内容から分かるとおり、同レポートは「ネットワーク中立性」の観点から構成されている。ネット中立性とは、コンテンツの不当アクセスやネットワーク・トラフィックの公平性などを確保すること。ウェブ上で大きな影響力を持つグーグルは、ネット中立性を維持することが求められており、同レポートはウェブに公開され、適時更新されている。また、単なる政府機関への提出書類を超えて、その内容は世界のネット状況を如実に示す興味深い資料と言えるだろう。

 まず、トラフィック項目を見てみると、2011年だけで16件のサービス障害が発生している。各項目には関連記事のリンクがあり、その原因が分かるようになっている。

 たとえば、11年4月6日には西アジアのグルジア共和国でインターネットが使えなくなった。これによりグーグルのサービスも提供できない事態になった。

 これは単純な事故。銅線を廃材として売る75才の老婆が、地中に埋まったケーブルを掘っている時に、誤って光ファイバーを切断してしまった。おかげで約320万ユーザーが、5時間にわたってインターネットを利用できなくなった。

 途上国や米国の田舎では、直堀(じかぼり)埋設と称して光幹線ケーブルを管路などを整備せずに直接地中に埋設する。グルジアの老婆は、まさか古い銅線の横に光ファイバーがあるなどとは思わず切断してしまった。グルジア内務省は「高齢ゆえに罪を問わず」ということで老婆を釈放した---という顛末は、ほほえましい。

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