サッカー
サッカー後進国に手を貸してアジア全体のレベルアップを図る努力は、結果的に日本代表の強化にもつながる
同じ地域内での切磋琢磨の重要性を痛感させたユーロの戦い〔PHOTO〕gettyimages

 世界を目ざすにはまずアジアから、というのが私の考えです。

 サッカー日本代表には、韓国という宿敵がいます。最近ではオーストラリアとも、拮抗した勝負を演じています。お互いを意識し合うライバル関係は、個人とチームのレベルアップを促してくれます。

 しかし、アジア全体を見渡すと、少しばかり物足りない現状が浮かび上がってくる。ワールドカップ予選やアジアカップなどの公式戦を前にしたとき、「このチームには勝てるかな?」とか「今回は厳しい試合になりそうだ」思える相手が、果たして何か国あるでしょうか。

 おそらくは、片手で足りるぐらいでしょう。両手では余る。コンディションさえきちんと整っていれば、つまり「普通に戦えば勝てる」と思える相手が、少なくありません。

 それ自体は悪いことではありません。ただ、「アジア」と「世界」の実力を近づけていかないと、結果的に我々は「世界」で苦戦することになってしまう。

 日頃から切磋琢磨していく重要性は、先日の「ユーロ」を見れば明らかです。スペイン、イタリア、ポルトガル、ドイツ、イングランド、フランス---世界的なサッカー大国がひしめく「ユーロ」では、グループステージから激しいバトルが繰り広げられました。

 2年前のワールドカップで準優勝したオランダが、1勝もできずに大会を去る。それぐらいレベルが高い。ワールドカップより気の抜けない大会と言ってもいい。自分たちの足元であるヨーロッパでの戦いが、世界で結果を残すための準備となっているのです。

ないものを数えてもしかたがない

 昨秋からベトナムへ足を運んできた私は、同地でキッズアカデミーの開催に携わってきました。学校が夏休み期間中の今年6月から7月上旬にかけて、8歳以下の子どもたちを対象にトレーニングをしたのです。

 同時に、ユース年代の指導者向けのプログラムも実施しました。"ゴールデンエイジ"と呼ばれる年代の子どもたちはもちろん、彼らを指導する人材を育てるためにも、我々のノウハウを提供しました。

 代表チームが好成績をあげるには、U-20やU-23のカテゴリーでの強化が前提になる。同じように、U-20で結果を残すには、U-15やU-17での強化が必要です。下からの積み上げがしっかりしていれば、一定水準以上の選手を絶えず輩出することができる。岡田武史前監督からアルベルト・ザッケローニ監督へスムーズにバトンが引き継がれたのも、日本の育成システムが機能しているからに他なりません。

 私がベトナムを訪れたのは、7月上旬でした。「ユーロ」が終了したばかりで、当地のサッカー関係者からもいろいろと質問をされました。

「ベトナム人は背が高くないですが、どうしたら日本のようになれると思うか?」

「背が低いだけじゃなく、身体も細い。これでは、長身選手の多い国に勝てないと思うのですが・・・」

 日本国内の講演会でも、「日本人は身体が小さいけれど、世界で勝てますか?」といった質問を受けます。

 私の答えは決まっています。ベトナムでも、このように答えました。

「ないものを数えても、しかたがないと思いませんか? あるものを磨いていきましょう」

 身体の小さな名選手はたくさんいます。古くはディエゴ・マラドーナ、最近ではシャビ、メッシ、イニエスタなどです。FCバルセロナ(スペイン)の攻撃陣に大型選手はいませんが、それでも世界中が感嘆するようなパスサッカーを見せている。あるものを磨いていく創意工夫から、その国独自のサッカーが生まれていくのです。

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