天下りによる「規制の虜」にはまったのは東電と原発だけではない。大阪維新の会が「八策」で掲げる「消費税の地方税化」こそ総選挙の争点に

 今回は原発事故の国会事故調と大阪維新八策を取り上げる。

 国会事故調(正式には「国会東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」、委員長=黒川清・元日本学術会議会長)が5日、報告書を国会に提出した。原発事故は「人災」と断定するものだ。報告書の公表直後、ある委員から電話があった。

「高橋さんが事故直後に言っていた『規制の虜(Regulatory Capture)』を使わせていただきました」

 報告書のはじめに、「想定できたはずの事故がなぜ起こったのか。その根本的な原因は、日本が高度経済成長を遂げたころにまで遡る。政界、官界、財界が一体となり、国策として共通の目標に向かって進む中、複雑に絡まった『規制の虜(Regulatory Capture)』が生まれた。・・・安全対策は先送りされた」(5ページ)と書かれている。

 電力会社は独占企業だから、ライバル企業との競争はない。監督するのは政府=原子力安全・保安院だけで、政府さえ丸め込めば、あとは恐いモノなしだ。実際、東電は歴代経産幹部の天下りを受け入れており、2011年1月には原子力安全・保安院の上部組織である経産省資源エネルギー庁の前長官だった石田徹氏が、退官後わずか4ヵ月で顧問に天下っている。同氏は事故後、何の責任もとらずに辞めた。こうした天下りの見返りとして政府は厳しい監督をせず、安全基準も大甘だったことが国会事故調の報告書によって明らかになった。

 このように、規制する側が規制される側に取り込まれて、規制が規制される側に都合よく歪曲されるメカニズムを「規制の虜」という。ノーベル賞経済学者ジョージ・スティグラーが唱えた理論だ。もっとも日本では「官民の癒着」というのはよく見られる構図だ。規制者側に専門知識がないと、簡単に取り込まれる。ちなみに霞が関では、役人が電力会社から接待を受けてヘナヘナになることを「感電」すると言っていた。相手がガス会社の場合は「ガス中毒」だ。

どの役所にも「東電問題」はある

 国会事故調はよくやったと思う。そもそも今回の原発事故については、この国会事故調のほか、政府事故調(正式には「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」)と民間事故調(正式には「福島原発事故独立検証委員会」)が存在する。

 「規制の虜」という問題構造があるので、政府事故調が政府について甘くなるのは当然だ。民間事故調の課題は東電に切り込めるかどうかであるが、法的権限がないので東電から事情聴取を拒否されている。その段階で、意気込みは強くても調査としては不十分になる。しかし国会事故調には法的調査権もあり、「規制の虜」を暴く上で唯一期待の持てる存在であったが、実際にその期待に応えてくれたと思う。

 国会事故調は、(財)原子力安全技術センターが開発した「SPEEDI(スピーディ)」について、民間には情報を公開しなかったにもかかわらず、米軍には開示していたという国民からすれば信じられない政府の失態も明らかにした。

 また、「当委員会は、事故の直接的原因について、『安全上重要な機器の地震による損傷はないとは確定的には言えない』、特に『1号機においては小規模の LOCA が起きた可能性を否定できない』との結論に達した」(13ページ)とし、政府・東電の主張する「津波原因説」に疑問を呈している。

 もっとも、報告書には書かれていないが、震災直後の昨年4月27日、衆院経済産業委員会における吉井英勝議員(共産党)の質疑で、地震による受電鉄塔の倒壊で外部電源が失われたことは明らかになっている。この外部電源は福島第一原発5、6号機に通じており、この鉄塔が倒壊しなければ、内部融通で1~4号機にも通電でき「全機外部電源喪失」には陥らなかったといわれている。その場合、津波で非常用電源が喪失しても大丈夫だったはずなのだ。その鉄塔は津波の到達範囲にはなく、津波ではなく地震動が原因で倒壊した。この意味で、原発の「電源喪失」は地震が原因といえる。

 それにしても、報告書の冒頭の「事故は継続している」との言葉は重く受け止めなければいけない。「規制の虜」のキモである「天下り」という言葉は、野村修也委員(弁護士)のメッセージに見られるだけだが、脱官僚で政権交代したはずの民主党が政権を担っても、形を変えて「天下り」は継続されている。天下りによる「規制の虜」はどの官庁でも見られることであり、事の軽重は異なるが、どの役所にも「東電問題」はあると思うべきだ。

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