必要なのは「牛若丸」と14人の衆議院議員。「壊し屋」小沢一郎、生き残りの鍵はこの2点にかかっている!
小沢一郎氏〔PHOTO〕gettyimages

 政界人物譚の名人として知られた松野頼三氏(故人)は、以下のように言ったことがあった。

「龍ちゃんは日本刀の切れ味を持っている。だが、一人で戦えば刃こぼれして、刀身も折れる。小沢君は七つ道具を持った武蔵坊弁慶だ。誰とでも渡り合える。しかし、牛若丸がいなくては、勝手が悪かろう」

 橋本龍太郎「自社さ」政権下の93年夏前ごろ、その松野氏が、当時の橋本首相と新進党の党首だった小沢一郎元民主党代表との所謂「一龍対立」と言われた、氷炭の仲の2人を評して語った言葉である。

 改めて言うまでもないが、松野頼三氏とは吉田茂元首相の政治指南役だった松野鶴平元参院議長を父に持ち、55年体制下の自民党佐藤(栄作元首相)派に所属し、衆院当選15回を数えた大ベテランであった。後年、田中角栄・福田赳夫・大平正芳の「挙党協」の包囲網に晒された三木武夫政権を自民党総務会長として支えた人物である。

 と同時に、6月26日の消費増税関連法案の衆院採決で反対票を投じた松野頼久元官房副長官(当選4回)の父親である。その頼久氏は民主党鳩山(由紀夫元首相)グループに属し、いままさに焦点となっている「離党予備軍」の中心人物だ。同法案は8月10日前後に参院採決・成立が確実視されるが、成立後、焦点の鳩山が離党して「小沢新党」に合流するかどうかの判断には、頼久氏が与える影響力が少なくないとされる。

松野頼久氏を口説き落とせるか

 さて、肝心の小沢氏である。衆院議員37人と参院議員12人を引き連れて民主党を離党、7月11日に新党を立ち上げる。4回目の「創造と破壊」である。発表された新党の陣容は、代表:小沢一郎(衆院当選14回)、代表代行:山岡賢次前国家公安委員長(5回)、副代表:広野充士(参院当選2回)、幹事長:東祥三前内閣府副大臣(衆院5回)、幹事長代行・牧義夫前厚生労働副大臣(4回)、国対委員長:鈴木克昌前幹事長代理(3回)---である。

 「お粗末」と言うと失礼だが、「小沢新党」の人材が脆弱であることは否めない。まさに松野頼三氏が言う「牛若丸なき弁慶」である。

 97年12月に結成した自由党には、小沢氏が213人もの国会議員を擁した新進党を解党、「小沢純化路線」を目指したものだったが、それでも53人の多士多彩の衆参院議員が付いていった。海部俊樹元首相、加藤六月元自民党政調会長(故人)、権藤恒夫元公明党副委員長、二階俊博元経済産業相、藤井裕久元財務相(現民主党税調会長)、野田毅元経企庁長官(現自民党税調会長)、中井洽元法相、小池百合子元防衛相---などなど、今回の新党に結集した陣立てと比較しても、その戦力の差は歴然としている。

 故に、今後の政局で生き残るためにも小沢氏は「牛若丸」を必要としているのだ。党員資格停止6ヵ月の処分を受けた鳩山氏が「牛若丸」たり得るかは議論の余地が残るが、少なくとも巨額の"安子マネー"を相続した同氏の潤沢な資金力は喉から手が出るほど欲しいに違いない。

 鳩山氏に同調して小沢新党に合流する可能性があるのは、山田正彦元農水相(5回)、川内博史衆院政治倫理審査会長(同)、そして松野頼久氏あたりだ。そうなると、政治家の血統とキャリア、ルックスとスマートさなどからして、松野氏が唯一「牛若丸」になり得る人材と言える。換言すると、小沢氏が依然として永田町の「壊し屋」として政治力を維持できるかどうかの鍵は、松野氏を口説き落として合流させられるか否か、である。

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