ドイツ
その神々しく美しい光景にワーグナーを感じた!「近くて遠い島」尖閣諸島訪問記【前編】
石垣島の新川港で出航前。 後ろに見える漁船に乗り込んだ

 6月25日、尖閣諸島へ行った。現在、日本と中国と台湾の3国がそれぞれに領有を主張している紛争海域で、日本政府は、立ち入りは漁業活動のためしか認めていない。「尖閣に領土問題は存在しない」と言いつつ、実際には主権を行使することを遠慮しているのだ。

 だから私たちは漁師見習いということで、3隻の漁船に分乗した。遠征の趣旨は、日本の海なのだから日本人の存在を示す! 平たく言えば、政府がやらないなら民間でやりましょう、ということだ。前回の遠征(6月9日)には国会議員も参加したが、国会議員が自国の領土を視察するのに漁師のふりをしなければいけないなんて、絶対におかしいと思う。

 総大将は日本文化チャンネル桜の社長、水島総氏で、今回9度目。尖閣での「集団漁業調査活動」の主催者だ。水島氏が幹事長を務める"頑張れ日本! 全国行動委員会"は、「尖閣諸島で魚を釣ろう!」という企画も打ち出している。今回、遠征に同行したのは、ジャーナリスト、カメラマン、海底調査のための潜水カメラマン、元自衛官、環境保護団体の代表、都議の議員は「東京都有志議員団」から7名。東京都は尖閣の島を買うつもりなので、周辺海域の視察がことさら重要である。

 そして私だ。私の場合、日頃の活動ジャンルも異なるし、ましてや海の上で何かの役に立つわけでもないが、結果的にはこうして、おそらく尖閣諸島などにはあまり興味のない(と私が想像する)このコラムの読者に異色のニュースをお届けできるので嬉しい。ちなみに私は常日頃から、なるべく多くの人が領土問題に関心を持ってほしいと思っている。

 とはいえ、「行く」と返事をしてしまってからは、かなり怖気づいた。中国に撃沈されてしまったらどうしよう。それより、拿捕はもっとイヤだ。尖閣諸島の周辺は波が高く、漁船は大海に浮いた木の葉のように揺れるそうで、落っこちるとサメに食われてしまうし・・・。怖い、怖い、怖い。遺書を書くべきか?  そもそも、海はあまり好きではない。豪華客船にも乗ってみたいとは思わない。海よりも山のほうがいい。

 だいたい、今まで芦ノ湖の遊覧船のようなものにしか乗ったことがなかったので、自分が船に強いか弱いかさえもわからない。聞くところによると、過去の尖閣遠征では、船酔いで寝たきり状態の人も多かったらしい。どうしよう・・・とグズグズ思っているうちに当日になり、気が付いたら、怖いという気持ちは跡形もなく消え去り、ワクワクしていた。我ながら変だ。

生まれて初めて見る眩しい夜空

 出帆は石垣島の新川港から。小さな漁船。これで外洋を170キロも行くなんて、信じられない。夜8時15分、いよいよ出航。上弦の三日月が美しい。船長(本物の漁師)の話では、ほぼベタ凪。あまり揺れないなら有難い。

 凄まじいエンジンの音を聞きながら1時間足らずで、ぐるり360度が漆黒の闇となった。いや、星がある。満天の星だ。こんな眩い夜空を見るのは生まれて初めて。この星を見られただけでも来た甲斐があったと思う。

 船室でうとうとしていたら、突然、「台湾船だ!」という声で起こされる。船縁を伝って甲板に出る。ここが一番怖い。狭いうえに手すりがない。突然の揺れで海に振り落とされるとサメの餌になると思い、必死で手がかりを探し、しっかと掴みながら進む。緊張!

 遠い闇の彼方に、ポツン、ポツンと灯りが見える。台湾船が漁をしているのだ。尖閣諸島は台湾からは目と鼻の先。こんなに近いのだから、台湾が領有を主張するのは心情的にはわかる。しかも、この海域は魚の宝庫だ。

 ただ、1945年、中華民国がそれまで日本国が統治していた台湾を接収し、実効支配を開始した時、尖閣諸島は日本領土のままだった。そのあと51年、サンフランシスコ講和条約で日本が最終的に台湾におけるすべての権利を放棄した時にも、尖閣は日本固有の領土だった。つまり、誰の認識でも、尖閣は台湾に含まれていなかったのだ。当時の中国および中華民国で編纂された地図でも、尖閣諸島は日本領になっていた。そして1972年、アメリカ軍は、「尖閣諸島を含む南西諸島」を日本に返還した。いわゆる沖縄返還である。

 中国と台湾が尖閣の領有権を主張し始めたのは、1968年の海底調査で、この付近に石油や天然ガスの埋蔵が確認されてからだ。石油の埋蔵量はイラクに匹敵するという調査もあるが、それほどないという説もあり、よくわからない。天然ガスは、すでに中国が、同じ東シナ海でも尖閣よりもっと北方の、日中中間線のあたりでガンガン生産している。

 こうして実効地を確立することで、中国は将来の東シナ海の制海権の拡大に役立てていける。いずれ尖閣にも進出できるかもしれない。資源確保、安全保障、領土拡張のトリプル作戦だ。

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