留学生獲得へ海外事務所開設相次ぐ
グローバル化の「改革プラン」で後押し 文科省[大学]

昨年11月にチュニジア・ハマメット市で開かれた筑波大学の留学説明会(文部科学省提供)

 少子化による受験生の減少傾向が続く中で、優秀な留学生を獲得しようと海外事務所を開設する大学が増えている。一方、文部科学省はこのほど、今後5年間かけて取り組む大学改革実行プランを発表した。グローバル化に対応した人材を育成するため、日本人の海外留学や外国人留学生の受け入れの増加の必要性を強く押し出している。各大学の取り組み次第では、大学関係予算の分配の在り方にまで踏み込んでおり、大学の生き残りをかけた経営戦略が求められている。

 筑波大学は昨年11月、北アフリカのチュニジアの北東部にあるハマメット市で留学説明会を開いた。一連のアラブ諸国の民主化の流れの中で、チュニジアは同年初めからの反政府運動の拡大でベン・アリ大統領の長期政権が崩壊。新たな政権が発足するなどの前後だった。そのような情勢の中でも、現地の大学生や高校生約350人が集まった。すべて筑波大がバスをチャーターして、首都チュニスの大学や英語で授業を行っているエリート養成高校から約1時間かけて会場まで連れてきた人たちだった。

 説明会では奨学金や日本での寮生活に関することや、日本で学んでいるチュニジア人留学生による体験談もあり、参加者からは「指導教員を紹介してほしい」など意欲的な質問も多く出たという。

 筑波大は、チュニスのほか、タシケント(ウズベキスタン)▽ホーチミン(ベトナム)▽北京(中国)▽ボン(ドイツ)に留学生を募集するための海外事務所を開設している。チュニスは最も早く2006年5月。イスラムとヨーロッパの文明の交差点にあたり、文化の多様性が研究のフィールドになるとにらんでの進出だった。チュニス事務所副所長の森尾貴広准教授は「外国人留学生を育てる以外に、筑波大のキャンパスで日本人学生が外国人留学生と当たり前に接することで世界に目を開かせる刺激になる。グローバルな人間として自分を高める動機付けになる」と目的を語る。

 筑波大の外国人留学生数(1681人)は全学生数(1万5493人)の1割超。今春は外国人留学生530人が入学し、そのうち4人がチュニジアからだった。

 留学生募集のための事務所を海外に設立する動きが相次いでいる。今年に入り、東京大(バンガロール・インド)▽早稲田大(サンフランシスコ・米国)▽法政大(北京)▽北海道大(ヘルシンキ・フィンランド)の5校がある。

 文科省によると、09年10月時点で事務所を設けていたのは61校で計166カ所(30カ国・地域)。毎日新聞の調べでは、その後少なくとも10大学が8カ国10カ所に事務所を開き、2大学が開設を検討している。

優秀な学生受け入れて刺激に

 外国人留学生を募集する目的は、「内向き」と指摘される日本人学生への刺激と、優秀な留学生を招くことで大学のレベルを上げたい---の2点が挙げられる。北海道大は今年6月、ヘルシンキに事務所を開設した。同じ寒冷地にあり、農業や環境などの分野の研究が似通っているというメリットともに、欧州各国へのアクセスの良さもメリットに感じているという。同大国際本部は「少子化で高校生の数が減ると、大学に入りやすくなり大学生のレベルも低下する。フィンランドに限らず、ゆくゆくは欧州各国からも留学生を迎えたい」と意欲的だ。

 外国人留学生の受け入れについて政府は、08年7月に閣議決定された教育振興基本計画で「2020年をめどに30万人」との数値目標を立てた。また日本人学生の海外留学については、今年6月の文科省の大学改革実行プランで「20歳代前半までに同世代の10%(約11万人)が経験」とした。

 現状は、外国人留学生数が13万8075人(11年)。海外に留学している日本人学生は5万9923人(09年)と、目標までには大きな開きがある。

 文科省は、この双方向の留学生を増やすための方策として、大学入試における英語能力検定のTOEFL・TOEICの活用や、卒業時のTOEFL・TOEICの目標点数の設定、外国人・日本人双方の留学生数の目標設定などを想定している。

 そのうえで、こうした国際化への取り組みを行う大学へ予算を重点的に配分する方針も打ち出した。細かな制度設計はこれからだが、こうした文科省などの政策が、大学の留学生の獲得と送り出しに拍車をかけている。

 一方、海外に事務所を持たない大学も、留学生の獲得に乗り出している。日本学生支援機構(JASSO)が11年10月にベトナムのハノイとホーチミンで開いた留学説明会には日本から、それぞれ45大学(国立27、私立18)、46大学(国立28、私立18)が参加した。今年も11月の開催を予定しているが、既に昨年を上回る数の大学が参加を表明しているという。

 ベトナムからの留学生は01年は938人で国・地域別の8位だったが、11年は4033人で中国(約8万8000人)、韓国(約1万8000人)、台湾(約4600人)に続く4位とランクアップ。日本企業のベトナム進出も背景にあると思われるが、10年9月にハノイに事務所を開設した京都大学によると、ベトナムにはレベルの高い日本語学校があり、留学先に日本を選びやすいという。

 だが、海外からの留学生の動向からは、課題も浮かぶ。JASSOによると、10年度に日本の大学・大学院などを修了した外国人留学生約3万7000人のうち、日本国内で進学・就職したのは約2万4000人(67%)。前年の72%より5ポイント減った。外国人留学生の日本国内での進学・就職は日本への留学人気のバロメーターとなるだけに、留学生の獲得に向けて気になるデータだ。

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