野球
二宮清純「山口鉄也の成功に見る“人を見る目”」
三浦大輔も名伯楽・小谷の教え子のひとり

 横浜(現DeNA)、ヤクルト、巨人で計33年に渡って投手コーチを務めた小谷正勝さんはスカウトのことを「仕入れ屋」と呼びます。小谷さんはスカウトが仕入れてきた素材を磨き上げ、商品に変えるのがコーチの仕事だと考えています。

名コーチが見つけた“掘り出し物”

 コーチは仕入れに関して口出ししないというのが小谷さんの基本姿勢ですが、スカウトに頼まれて一度だけ“見本市会場”に足を運んだことがあります。2005年のことです。

 巨人軍入団テスト。当時2軍投手コーチだった小谷さんはベンチの陰からテスト生のピッチングを見守っていました。

 長身のサウスポーが投げるボールが気になりました。「あの子の名前は?」「山口鉄也と言います」。マネジャーが答えました。

 その時の様子を小谷さんはこう振り返ります。「チェンジアップがコースに決まるんです。難しいボールを上手に投げる子だなぁ、と。細かいコントロールこそなかったものの、ストライクも楽に取れていた。それで末次利光さん(当時のスカウト部長)に“あの子、おもしろいですよ”と言ったんです。末次さんはウンウンとうなずいていました」

 山口投手は米国で4年間のマイナー暮らしの後、帰国。横浜と東北楽天の入団テストを受けたものの、いずれも不合格になっていました。巨人の入団テストは、いわば“ダメ元”で受けたものだったようです。