原発に関する「3つの選択肢」と「3つのシナリオ」に見え隠れする政治的思惑と原子力ムラの意図

 衆院での消費税法案採決後に起きた民主党分裂騒動で国会は機能停止となり、参院へ舞台を移すまでに2週間ほどの時間を要する様相である。こうした永田町のゴタゴタをよそに、原子力をめぐるエネルギー行政は淡々とかつ粛々と議論が進められている。

 6月21日、原子力委員会(以下「原子力委」)による「核燃料サイクル政策の選択肢について」が発表され、その1週間強後の6月29日にはエネルギー・環境会議(以下「エネ環会議」)で「エネルギー・環境に関する選択肢」が示された。

 しかしこの2つの会議で示された3つの選択肢にはわずかな違いがあった。ここに、私は危機感を持った。消費増税政局に翻弄される永田町をよそに、またもや霞が関で原子力政策が無定見に進められることに対しては、意見を述べていかなければならない。

 昨年9月、野田総理は所信表明にて「2030年までをにらんだエネルギー基本計画を白紙から見直し、来年の夏をめどに、新しい戦略と計画を打ち出します」と訴えた。この方針に基づく政策決定プロセスの一環として、まず原子力委による原子力政策大綱の見直しと、総合資源エネルギー調査会(以下「総合エネ調」)によるベストミクスの策定を行い、そしてエネ環会議による国民的議論の結果を踏まえた「革新的エネルギー・環境戦略」を決定するという流れが定められている。

 政府の工程では、8月に「革新的エネルギー・環境戦略」を決定したあと、速やかに「エネルギー基本計画」を定めることとなっており、大飯原発の再稼働問題をはじめ、まだまだ国民的コンセンサスを得るには丁寧さが求められる新たな原子力政策構築についても8月中の決定を目指している。

 ここでもまた、最近の総理のキャッチフレーズとなりつつある「待ったなし」で政策決定が進められようとしているのである。

「二つの会議」で示された「3つの選択肢」

 しかし、こうした意思決定プロセスに対し、私は危機感を持っている。その一つが、原子力委に昨年9月に設置された原子力発電・核燃料サイクル技術検討小委員会(以下「技術小委」)の結果を踏まえた「核燃料サイクル政策の『3つの選択肢』」と、エネ環会議で示された「3つのシナリオ」との間に微妙な表現の変化があることである。ここに、実は政治的思惑と原子力ムラの意図が見え隠れする。

 技術小委は6月5日に核燃料サイクルの検討結果を原子力委に提出し、これを受けてエ環会議は6月8日に中間的整理をまとめた。その中では、2030年時点での原子力発電比率を、以下の3つの選択肢で検討した。

①0%(できるだけ早くゼロとする)
②約15%まで下げる
③約20~25%(以前より低減させるが、引き続き一定程度は維持する)

 まず、これら選択肢の実現可能性について考えてみよう。

 国民的意識の中では原発を将来的にゼロとする①についてのシンパシーは大きい。しかし、現実の電力供給体制を考慮すると、中間に当たる②の15%という数字は仕方なく受け止められるものかもしれない。また、③にいたっては従前よりわずかに減るというシナリオなので、これについては受け入れがたいものがあると予測される。結果、落としどころとしては②の15%がもっとも妥当であるといえよう。

 そして、これら3つの選択肢に対して、原子力委は対応する核燃料サイクル政策について、6月21日に以下のように定めた。

①0%    →全量直接処分
②約15%    →再処理・直接処分併存(p1)
③約20~25%    →再処理・直接処分併存(p2)

 ここで原子力委は、原子力発電所を2020年時点でゼロにしていくという選択肢の場合は全量直接処分を行う、すなわち核燃料サイクルを中止し、それ以外については再処理と直接処分を「併存」すると示した。この結果については、私自身異論のあるところでもあるが、政府においては少なくとも、2005年の原子力政策大綱で定められた「全量再処理」の核燃料サイクル政策からは見直しが図られた内容だと評価できる。

 この、原子力委の「3つの選択肢」が提示された後、29日にエネ環会議で「3つのシナリオ」が以下のように決定された。

①0%    →全量直接処分
②約15%    →再処理・直接処分がありうる(p11)
③約20~25%    →再処理・直接処分がありうる(p12)

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