ついにハードウエア事業に乗り出したグーグル ~副業メーカーが本業メーカーと戦うための秘策とは

Google I/Oでお披露目されたタブレット端末「Nexus 7」〔PHOTO〕gettyimages

 先月中旬から下旬にかけて、マイクロソフトとグーグルが相次いで自社開発のタブレット端末をリリースした。既に同様の製品を発売しているアップル、アマゾンと合わせ、米IT業界の4強が軒並みハードウエア・ビジネスに乗り出すことになる。

 しかし彼らのうち、少なくとも本気でハードウエア事業で儲けようとしているのはアップルだけ。残りの3強は、全く別の動機からハード事業への参入を決意している。

 まずアマゾンは自社製タブレット端末「Kindle Fire」を199ドルという破格の安値で販売することにより、その利用者ベースを拡大する。これによってハード事業自体は赤字でも、電子書籍などコンテンツ販売で儲けるのが狙い。

 一方、マイクロソフトがハード事業に参入する理由については諸説あるが、最もよく聞かれるのが一種のモデル機としての位置付けである。つまり同社は、アジア勢を中心とする端末メーカーが繰り出す最近のウィンドウズ搭載機の出来栄えに不満なのだ。

 そこでマイクロソフトが自分でハード(つまり今回の「Surface」と呼ばれるタブレット)を作って見せることにより、これをお手本(モデル)にして他のメーカーにもアップル製品と競合できるようなウィンドウズ搭載機を作って欲しい、と考えているのだ。このケースでも、アマゾン同様、マイクロソフトはハード・ビジネス自体で儲ける必要はない。

Made in the U.S.A.を売りにするグーグル

 最も興味深いのはグーグルである。同社は先月27日から開催された「Google I/O」というイベントで3種類のハードウエア製品を発表した。まずアマゾンの「Kindle Fire」に対抗する199ドルのタブレット端末「Nexus 7」、299ドルのホーム・エンターテイメント・プレイヤー「Nexus Q」、そして1,500ドルのAR(拡張現実)眼鏡「Google Glass」の3つだ。

 やはりグーグルも、これらの製品自体から利益を上げる必要はないし、そんな期待は最初から抱いていないだろう。たとえば1,500ドルの「Google Glass」は巷の関心を呼んでも、ほんとに買う気になる人は極めて限られている。グーグルの四半期業績に貢献するとはとても思えない。

 例によって、グーグルには新規事業における緻密なビジネス戦略など存在しないかのようだ。今回の動きから、まず見てとれるのは、タブレット・ビジネスで先を行くアップルやアマゾンに負けてたまるか、という強烈な対抗意識。そして「Nexus 7」における199ドルという値付けからは、アマゾン同様、「ハードで損して、コンテンツで儲ける」という意図がうかがえる。

 いずれにせよ、全ての要素が有機的に絡み合った統一戦略があるというより、潤沢な手持ち資金にものを言わせて、様々なことを様々な意図で試したり、企てたりしている感がある。

 これについて米ニューヨーク・タイムズ紙が独自の視点から報じている。6月27日付けの「Google Tries Something Retro: Made in the U.S.A.」という記事では、前述の299ドル製品「Nexus Q」が米国の工場で製造されていることに着目。グーグルのこうした動きは、最近、工場労働者の人件費や電力料金などが高騰している中国から米国内へと、米国の製造業が回帰する先駆けになるのではないか、と見ている。

 確かに昨今のドル安基調の中、輸出依存度が高い製造業は米国で息を吹き返しつつある。米国製造業の輸出額は2008年のリーマン・ショック後、一時は年間8,000億ドルまで落ち込んだが、その後1兆740億ドルにまで盛り返している。つまり純粋に輸出額ベースで見ると、米国は今でも結構な「モノづくり大国」なのだ。

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