バイラル動画を活用した新しい異文化交流の形 ~「Where the Hell is Matt?」と「OMG! Meiyu」が示す大きな可能性

「Where the Hell is Matt? 2012」のユーチューブ・ページ

 一人の個人がオンライン動画を活用することで、異文化理解や国際交流、語学学習に役立ち、そして平和な社会や外交関係の安定にも貢献できるのではないか。そんなことを感じさせてくれる試みを2つ、今回は紹介したいと思います。

 まず1つめは、2005年に最初にアップされ、世界中で話題になった動画シリーズ「Where the hell is Matt?」の最新版で、今年6月20日にリリースされた「Where the hell is Matt? 2012」です。

マットはいったい今どこで何をやっているのか?(Where the hell is Matt now? And what the hell is he up to?)」 CNNGo 2012年6月26日

 動画の主人公は、世界各地を旅しながら、現地の人々と一緒に独特のコミカルなダンスを踊る35歳のアメリカ人、マット・ハーディング(Matt Harding)氏。その自然な笑顔や人柄などが共感を呼び、今までに3本のバイラル動画で世界的に話題になった有名人です。

 2005年にアップされた最初のバージョンは、ハーディング氏が一人でダンスをしている様子を映したもので、約284万回視聴されました。2006年のバージョンからは「Stride」というガムのブランドがスポンサーにつき、行く先々で集まった現地の人々と踊るバージョンは、約1800万回視聴されました。そして2008年のバージョンは4300万回以上も視聴されるほどになりました。

 日本では、ハーディング氏は2010年にビザカードのテレビCMにも登場しているので、ご覧になった方も多いことと思います。

 今回、前作から4年の月日を経てリリースされた第4弾は、公開からたった2週間で、すでに250万回以上も視聴されています。ハーディング氏が訪問したのは北朝鮮の平壌、シリアのダマスカス、ソロモン諸島、ルワンダのキガリ、そして日本の京都など約80の場所で、それぞれの地で多くの人と笑顔で踊る姿が映し出されます。

 動画を見ると、「世界には国境はなく、ダンスを通じて多くの人がひとつになれるのだ」というハーディング氏の思いがよく伝わってきます。この最新バージョンの制作費はすべて自費で捻出したとのことです。

 CNNGoのインタビューで「なぜ自腹を切ってまで、その変わったダンスで世界中を旅するのか?」との問いに対し、ハーディング氏はこう答えます。

「(世界の人々の)互いの恐怖心を少しでも取り払うためです」

 ぜひ動画を一度ご覧になってみてください。

中国の若者に大人気のオンライン・アメリカン英会話番組「OMG! Meiyu」

新しいインターネットの公共(The New Internet Public)」 Stanford Social Innovation Review 2012年6月15日 

 現在25歳のジェシカ・バイナキー(Jessica Beinecke)さんは、オハイオ大学で中国語とジャーナリズムを専攻したアメリカ人女性です。オンライン動画番組「OMG! Meiyu」(Oh My Good! American Englishの略)の制作者であり、番組の進行役も務めています。

 「OMG! Meiyu」とは、「VoA(Voice of America)」という米政府系テレビ局の中国語のチャンネルで2011年7月から始まったオンライン番組です。毎日2〜3分間、アメリカの俗語(スラング)を英語と流暢な中国語で解説するもので、中国の10代~20代の若者の間で絶大な人気を誇っています。

 紹介されるのは、アメリカ人の普段の生活に関わるものではあるけれど、通常の語学の教科書には絶対に出てこないようなイディオムやフレーズばかり。ポップカルチャーの世界でよく使われるものもあります。そういった俗語について、バイナキーさんは豊富な身振り手振りを交えて説明し、その様子を自らワシントンDCの自宅のキッチンテーブルに置いたMacBookで録画、編集する、というスタイルの番組です。

 この番組は、ユーチューブや中国の動画共有サイト「優酷網(Youku)」ではすでに1300万回以上視聴されています。他にも、中国版ツイッターの「新浪微博(Sina Weibo)」を含め、ツイッター、フェイスブックなど計6つのソーシャルメデイアアカウントを活用しながら、熱烈な若い中国人ファンとの交流を行っているところが話題になっている所以です。

 6月上旬、ニューヨークで、インターネットと政治・民主主義について語る「パーソナル・デモクラシー・フォーラム(Pdf)」というカンファレンスが開催されました。このとき登壇したバイナキーさんは、運営している「OMG! Meiyu」を「Cross Cultural Communication Platform(異文化コミュニケーションプラットフォーム)」と呼び、多くの参加者から共感を集めました。

バイナキーさんは「OMG! Meiyu」を、アメリカの価値観を一方的に中国に伝えるための媒体としては位置づけず、中国の若者を「フォロワー」ではなく「参加者」と呼んでいます。毎回のレッスンのコンテンツが視聴者からのリクエストをもとに制作されていることなどを、彼女は壇上で強調していました。

 中国には昨年末の時点で、約4000人から成る「OMG! Meiyu」のファンクラブが存在します。ボランティアメンバーによって、「OMG! Meiyu」専用のiPhoneとアンドロイドのアプリも無償で開発され、世界中で番組を視聴することが可能になっています。

 以下は2011年8月に放映され、動画共有サイトで合計150万回以上視聴されたと言われるエピソード、「Yucky Gunk(汚いかす)」を取り上げた番組の動画です。ぜひご覧になってみてください。

 このように、今回は2種類の動画を紹介しました。いずれも、一個人がソーシャルメディアを活用することで、何百万、何千万もの人の心に触れるメッセージを発し、動画や番組を一緒に作成しながら異文化交流に寄与しているところが特徴です。さらには異文化交流のレベルを超えて、今までは外交官や政治家しか担うことができなかった役割を、普通の市民でも立派に果たせるようになる---そんな巨大な可能性を示唆してくれる画期的な試みでもあります。

本記事に関するご意見、ご質問、フィードバック等は筆者のFacebookページ
までお願いいたします。ツイッターは@socialcompanyです。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら
新生・ブルーバックス誕生!