白洲信哉 第1回 「伝記が書かれるたびに身長が伸びて、とうとう185cmになった祖父・白洲次郎の思い出」

2012年07月04日(水) 島地 勝彦

撮影:立木義浩

 <店主前曰>

 白洲信哉の祖父は、英国仕込みのダンディズムの象徴とも崇められているあの白洲次郎である。また祖母は"わびさび"を語らせたら天下一品のエッセイストとしていまも女性たちに人気のある白洲正子だ。もうひとつおまけに、母方の祖父は泣く子も黙る文芸評論家の泰斗、小林秀雄である。

 もしもわたしがこれだけのきら星のような遺伝子をもらって生まれてきていたらどうしただろう。大きく重たいプレッシャーに耐え切れなくなって自殺していたかもしれない。

 ところが白洲信哉本人は、風のなかの羽のように自然体で悠々と、いまどき珍しい"高等遊民"的な生きかたをしている。料理を作れば玄人も顔負けするほどの凄腕である。長身でイケメンの遺伝子はもろに次郎おじいちゃまから譲り受けたものだろう。大学生のときに考古学の発掘に目覚めたのは小林秀雄おじいちゃまの遺伝子なのか。子供のころから美味を食べ慣わされ培われた上質な舌を武器に、よく食の旅に出るのは白洲正子おばあちゃまの遺伝子なのだろうか。

 男の最高の幸せは女にモテることよりもDEN〈隠れ家〉を持つことであるとわたしは常々思っている。わたしも小さな男の隠れ家"サロン・ド・シマジ"を持っているが、白洲信哉はそれより数倍大きなDENを所有して客人をもてなしている。しかもそこで自ら料理を作って遇するのである。

 今回はいつもの狭い部屋から、ゆったりとした白洲信哉のDENに移動してネスプレッソ・ブレークタイム対談をやることになった。長身の立木義浩巨匠もいつになく張り切っている。そして対談が終わったら、白洲信哉が自らの手によるスッポン料理でもてなしてくれるという。考えただけで唾液がコンコンと湧いてくるではないか。

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