外資の次は日本企業の
『ニッポン脱出』が始まる

財務省に踊らされる菅直人の「経済無策」

 鳩山由紀夫政権の「経済無策ぶり」がいよいよ隠し通せなくなってきた。いまや成長戦略もマクロの財政金融政策も霞が関官僚と日銀に丸投げ状態である。

 日本経済新聞は3月10日付けの朝刊一面トップで「有力外資、相次ぎ日本撤退」と報じたが、この見出しに日本が置かれている現状が言い尽くされている。

 世界からみれば、いまの日本はとてもじゃないが投資対象にはならないのである。

 民主党政権の下で官僚と日銀が完全復活し、経済政策を仕切っている実態は菅直人副総理兼財務相の国会答弁で如実に示された。

 菅は10日、衆議院内閣委員会で自民党の中川秀直衆議院議員の質問に答えて、昨年末の新成長戦略で高らかにぶち上げた名目成長率3%の目標を財政再建の議論では採用しない方針を認めてしまった。もっと低い数字を前提に掲げるつもりなのだ。

 この問題は高橋洋一さんの当コラム(2月1日「日本国債格下げは鳩山政権崩壊の『サイン』」、2月22日「名目4%は成長の黄金率である」)、や筆者コラム(2月19日「GDPプラス成長が信用できない理由」)でも採り上げてきたので、ご存じの読者も多いと思う。

 もう一度整理しておくと、まず基本のメカニズムとして、経済が成長すればするほど税収は増える。逆にあまり成長しなければ、税収は少なくなる。

 この関係を前提にして、財務省は将来の増税を確実にすることを第一の戦略目標にしている。そのためには経済見通しを描くに際して、財務省は名目成長率見通しを低めにしておきたい。高めにすると、税収見込みが増えて財政が健全化し「これなら増税は必要ない」という機運が高まってしまうからだ。

 普通の国民にとっては、税収が増えて財政が健全化するのは良いことである。

 ところが財務省にとっては、増税なしで税収が増えて財政が健全化するのは困った(!)事態なのだ。財務省は普段、声高に財政健全化の必要性を叫んでいるが、実は財政健全化が目標ではなく、増税が本当の目標なのである。ここが財務省の二枚舌的な本質であり、国民に見えにくい部分だ。

 一方、政権を担う政治家として菅副総理兼財務相は国家戦略相だった昨年末、鳴り物入りで新成長戦略の基本方針を発表し、そこで名目成長率3%の目標を掲げてしまった。明るい未来を国民に見せたい政治的思惑があって、高めの数字を出したのである。

 ところが今回、国会で「機械的に新成長戦略の目標を財政運営の中期財政フレームの数字に一致すると言える状況ではない」と答弁し、これからつくる中期財政フレームでは3%よりも低い成長率を前提にする考えを明らかにした。

 これは、まさしく財務省の増税路線に菅が乗っかった「証拠」といえる。

 成長戦略や財政再建論議で基本になる名目成長率見通しについて、こうも都合良く数字を扱うとなると、肝心の中身についても、もはやほとんど期待できない。議論の出発点で霞が関路線に乗ってしまったのだから、あとはちょこちょこと官僚の作文とシミュレーションがこぎれいな図表になってまとめられる程度の話である。とても政治主導どころではない。

 なぜ、こうなってしまったのか。

「環境、健康、観光」が成長の柱になる?

 私は結局のところ、きちんとした世界標準のマクロ政策を議論し、それを党の政策に反映させていく力量をもった人材が民主党にいないためだと思う。まったくいないわけでもないが、残念ながら党の政策にまで反映しきれないのだ。

 成長戦略の策定ひとつとっても、責任者だった菅国家戦略相(当時)の貢献は「第三の道」を唱えた点にあった。

 第三の道といえば、1990年代後半に欧州で試みられた、新自由主義でもなく社会主義でもない中道左派路線を指すのが常識だ。ところが菅の場合は違う。

「私たちは公共事業・財政頼みの『第一の道』、行き過ぎた市場原理主義の『第二の道』でもない『第三の道』を進む。
  それは2020年までに環境、健康、観光の三分野で100兆円超の『新たな需要の創造』により雇用を生み、国民生活の向上に主眼を置く『新成長戦略』である」
(新成長戦略・基本方針から)

 勝手に「第三の道」の定義を変えているが、それは政治家の特権と認めよう。

 だが「環境、健康、観光の三分野」が成長の柱というのは、たいした根拠がない。せいぜい「ダメもと」か「やらないよりマシ」程度の話である。たとえば太陽光パネルを日本中に広めたところで、日本が輝かしい成長を取り戻すかどうか分からない。

 そもそも「成長戦略」という話自体が眉唾っぽいのだ。これで確実に成長する戦略なるものがあるなら、どうしてアフリカは200年も成長できずに貧しいままなのか。

 環境、健康、観光という具体的分野がなぜ出てきたかといえば、戦略をまとめた経済産業省がこれからの「天下り有望産業」として支援したいからだ。経産省はこうした産業で新たな業界団体や公益法人づくりを狙っていて、役人OBを専務理事などに送り込もうとしているのである。こういうのを「専務理事政策」という。民主党の成長戦略とは、専務理事政策の典型といっていい。

 つまり菅は成長戦略で経産省の術中にはまり、財政再建では財務省の術中にはまってしまった格好だ。

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