交流戦V 巨人「快進撃の陰に、野村ID野球の申し子」 開幕直後の重量打線野球が、足技を絡めてのスモール・ベースボールに転換

 開幕直後に5連敗し6年ぶりの最下位を経験するなど、泥沼のスタートを切った巨人。しかしその後、17勝6敗という圧倒的な強さで、6月16日に交流戦を初制覇。驚異の復活の裏には、ある人物による徹底したデータ分析があった。今季から戦略コーチに就き、巨人に初めてID野球を取り入れた橋上秀樹(46)である。

「ヤクルトで捕手や外野手として活躍し、楽天でコーチを務め野村克也監督に鍛えられたID野球の申し子で、相手チームの分析に長けています。清武(英利元球団代表、61)さんがデータを重視していたので、今季から選手に対戦相手の情報を提供するための『戦略室』を創設。橋上さんは秦(真司バッテリーコーチ、49)さんとともに清武さんに請われ、その責任者に就任しました。彼の集めるデータが正確なため、選手からは敬意を込めて〝かみ(神)さん〟と呼ばれているんですよ」(スポーツ紙巨人担当記者)

 橋上は'84年にドラフト3位でヤクルトへ入団、日本ハム、阪神などでプレーし'00年に引退した選手だ。'05年からは、楽天でヘッドコーチなどを歴任。野村監督の下でデータの活用法を徹底的に学んだ。

 橋上はスコアラーから上がってくる情報を、ただ選手に教えているだけではない。手元の資料に加え、1球ごとに相手投手の球種や投げ方、投球間隔などを、自分の目でチェックし対策を考案。試合前、試合中を問わず選手を呼んで、〝生のデータ〟を伝えているのである。

「橋上さんは『データはどの球団も持っている。そこに自分で得た生きた情報をプラスすることが大切なんだ』と、よく話しています」(前出・記者)

失敗してもベンチの責任

 5月22日の西武戦では、こんなことがあった。西武・先発の牧田和久(27)は初回、坂本勇人(23)に5球続けて外側へ変化球を投げて打ち取る。これを見ていた橋上は、坂本が4回の第2打席に入る前にこうアドバイスしたという。

「『スコアラーの資料だと、牧田はボールが先行するとストレートを投げる確率が高い。だけど今日は違うぞ。外の変化球を意識しろ』と忠告したんです。坂本は橋上さんのアドバイスを受け、2ボールから外角のスライダーを狙いすましたように振り抜きます。結果は見事、先制のホームラン。原(辰徳、53)監督は開幕直後こそ、こうしたデータを重視していませんでしたが、橋上さんの作戦がことごとく当たるので、徐々に重きを置くようになったんですよ」(前出・記者)

 橋上は、ミーティング形式も変えた。それまでは試合前に選手全員が集められ、「今日の相手は左投手だから右打者を並べる」などと、大雑把な指示が首脳陣から出されていただけだった。だが橋上は、選手一人ひとりを呼んで個別にミーティング。「前回の試合でお前が打ち取られたのは、すべて内角の変化球だから、今回もそこを突かれるはず。追い込まれたら、内角の変化球に狙い球を絞れ」などと、具体的な指示を出しているのだ。野球専門誌のライターが明かす。