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 民主党は労働組合に縛られた政党である。自民党が官僚依存だとすれば、民主党は組合依存。そして、その官僚と組合とが裏でつながっているというのはあまり知られていない。

 渡辺喜美氏は行革担当相を務めているときに、その現実をイヤというほど見せつけられたという。当時の公務員制度改革に対する主な反対理由は「労働基本権がないまま、公務員制度改革だけ先行できない」というものだった。そこで渡辺氏が「ならば労働基本権は全面解禁したらよい」「スト権まで含めて付与する議論をやりましょう」というと、霞が関の労働団体の幹部が大挙して大臣室にやって来て、「大臣、それは困ります」といった。

 つまり口では基本権拡大といいながら、現状を温存してもらうのがいちばん心地がいい、ということだ。

 一方、労働基本権がないことへの代償措置として、公務員の身分保障をする橋頭堡としての人事院がある。その人事院の廃止を盛り込んだ公務員制度改革関連法案が、今国会に提出されている。公務員に労働基本権を与えるので、人事院は廃止するという内容だ。

 人事院廃止は一応歓迎するにしても、公務員庁という新組織ができるので、役人お得意の「焼け太り」に気をつけなければいけない。

 それだけではない。人事院は往生際が悪い。今月15日、人事院は2011年度の年次報告を国会と内閣に提出した。この中で、公務員制度改革関連法案で国家公務員に労使交渉で給与などの勤務条件を決める労働協約締結権を与えるとしたことについて、「国会での十分な議論が必要だ」と異例の注文をつけたのだ。

 なにをいうか、である。臨時削減されているとはいえ、そもそも国家公務員の給与は民間の平均レベルより上。その元凶が人事院勧告である。

 人事院の調査は公平を装っているが、ベースとなっているデータは優良大企業に偏っている。「従業員数50人以上の企業」を調査していると謳っているが、実態は違う。「500人以上の企業」については、3800社程度を調査しているが、それ以下の「50~500人規模」では、5600社程度しか調査していない。日本では小規模な企業のほうが圧倒的に数が多いのだから、この調査方法は大企業偏重。結果、人事院勧告のベースになる民間給与の額は高くなっている。

 いっそのこと、この調査業務を民間に委託して人事院をすっきりなくすべきというのが理屈として当然。国税庁の所得調査はすでに民間委託されている。ちなみに、国税庁調査では民間給与は人事院調査より低くなっている。

 公務員改革に反対して、有名になったのは前人事院総裁の江利川毅。彼は内閣府、厚労省と、次官を二つもやった人物で、官僚から「公務員の守護神」と呼ばれていた。いわばシロアリの親玉で、そうした人たちに操られているのが民主党だ。民主党に政権交代して、現役出向などが抜け穴的に利用され、実質的な天下りがやりたい放題になり、役人たちも胸をなで下ろした。

 そんな江利川氏も、先日、公益財団法人医療科学研究所理事長に天下りした。同財団は内閣府所管であるが、仕事内容は厚労省と関係が深い。だてに内閣府と厚労省の次官をやっていなかったわけだ。この日本はいつまでも役人天国である。人事院が廃止になっても、新たにできる公務員庁でしぶとく生き延びる余地が残されている。野田さん、増税の前にシロアリ退治ではなかったの?

「週刊現代」2012年7月7日号より


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