原監督問題であらためて考える反社会的勢力と「成り上がり」の危険な関係

 巨人軍の原監督が不倫をして反社会勢力(つまりはヤクザ)から1億円を恐喝されてそれを支払ったという話が暴露されました。

 本件においてはもちろん原監督は被害者なのであり、その原因がなんであれ、ヤクザによる恐喝事件であるというのが本質です。これは刑事事件でもあり、恐喝をした人間を特定し、それなりの対処をすべき話なのであり、1988年にしてしまった24年前の不倫の話をああだこうだ言ってもどうなんだろうという気がします。もちろん褒められた話ではありませんが。

 本件がそれかどうかはわかりませんが、「美人局」(つつもたせ)という昔からある古典的な犯罪があります。それはヤクザが手配した女性とねんごろな関係になった後、その現場に踏み込んだり写真を撮ったりして、それを世間に公表するぞと脅しお金を恐喝するという大昔からあるゆすりの方法です。だいたいその関係を詳細に綴った日記や写真が後から出てくるというのが多く、そのことは、今回の件と極めて似ています。このような事件はとても数多く存在をしていて、表沙汰にならないものが多いようです。

90年代、日本企業はヤクザだらけだった

 私は1990年から資産運用の仕事をしており、専門が中小企業や新興企業の調査や投資の仕事です。大学卒業をしてからその専門の部署に配属され、現在も今のレオス・キャピタルワークス社でその仕事を継続しています。今回の発端となった1988年は、私が社会人になる2年前です。ときはバブルで、金融や不動産は花形産業で、かつこの回りには多くのお金が乱れ飛び、不法勢力(つまりはヤクザ)が闊歩していました。1989年の12月に日経平均指数は38,915円という高値をつけていました。今では考えられない時代です。

 当時は大阪の料亭の女将さんの尾上縫という人が数千億円ものお金を銀行から借入をして投機資金に回し、結局破綻をして負債総額4,300億円にものぼったという驚くべき事件も起きています。AIJ事件で2,000億円以上を消失させた浅川氏もびっくりの数字ですね。

私はこんな時代の中で日本の店頭市場(今のJASDAQ市場)を中心とした企業に投資をするファンドのアナリストになり、店頭市場の調査を始めました。そこで驚いたのは、ヤクザの多いことです。

 1990年代、日本の企業はヤクザだらけという印象でした。実際に株主総会に総会屋という不法勢力が当たり前に出入りをし、日本の大手の会社でも総務部長が総会屋に普通にお金を支払うのが常識化していたような状態でした。ましてや小さな上場したての不動産屋さんやリゾート開発の会社の社長や経営陣はどうみてもヤクザの親分にしかみえなかったですね。

 そもそも2000年になって新興市場が整備される前は、日本の創業者は、社会からなんらかの理由ではじかれた人が、まともな会社に就職できないので起業をしてみた、という塩梅(あんばい)のケースが多かったのです。

 口減らしのために農業地域の次男坊三男坊が集団就職で東京や大阪などにやってきて、ど根性とガッツで成り上がった叩き上げの社長。パチンコ屋や焼肉店などの自営業者の息子で、それなりの高い教育を受けてきたけれども日本の一般的な大企業に入るには隠然たる差別があり、やむなく起業を選択した在日韓国人や中国人。実家がとても貧乏で高等教育を受ける機会がなく、しかし抜群の商才があることにより一代で財をなした人。ーー彼らが90年台に上場してきた社長の典型例でした。

 もちろんこのような起業家=悪ではまったくありません。凡庸なサラリーマン経営者よりもはるかによい成果を出してきている会社が多いし、上場まで来た経営者はその過程の中で磨かれてきて、それなりの一角の人物になっていることも多かったと記憶しています。一方で90年台は現在ほど反社会的勢力に対するアレルギーもコンプライアンスの整備もされていないこともあり、ヤクザと見紛うような人や組織がたくさん上場してきました。

 会社訪問をすると、黒いサングラスで金のブレスレットをしている「総務部長」が出てくるようなことも少なくなかったですし、ほとんどどこかの組のような佇まいをしている会社もたくさんありました。もちろん、このような会社に投資をするとロクなことがないし、だいたい会社訪問をするのも命がけなので、いかに会社のヤクザ臭をかぎわけ、そこから身奇麗にしているか、というのが大学を卒業したばかりの私にとっては重大問題でした。

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