[近代五種]
山中詩乃(自衛隊体育学校)<Vol.3>「“はちきん”を強みに」

落馬は日常茶飯事

 自衛隊で陸上を続ける気持ちはなかったが、国体2位の実績もあり、山中は自衛隊体育学校の試験を受けることになる。ところが、陸上部は女子の採用がなかった。

「近代五種をやってみないか」

 そう声をかけたのが才藤だった。この一言が運命を変えた。
「高校まで陸上をやっていて、水泳の経験もある。近代五種に取り組む女子は日本でも数えるほどしかいません。何とか女子を育てたかったんです」

 それまで山中は近代五種という競技そのものを知らなかった。
「だけど、いろんな競技をやって楽しいかもと思いました。別のことをやってみたいと考えていたので、チャレンジすることにしました」

 しかし、5つの種目をこなすのは言うは易し行うは難しである。フェンシングでは剣を向けられて逃げ出したくなった。馬に乗っても落馬は日常茶飯事だった。
「まだ落ちるのはいいほうです。コントロールがきかず、バーッと走られるのが一番怖かった。止め方は習っていたのですが、どうすることもできなかった……」

 射撃も腕の筋力がなく、1キロの銃が支えきれなかった。山中のほかにも近代五種に誘われた選手はいたが、半年間の間に脱落していった。