なぜか「患者」は大企業のサラリーマンと公務員ばかり「新型うつ」これが真相です

2012年06月25日(月) 週刊現代

週刊現代賢者の知恵

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「ニチレイは新入社員の指導員を決めて、きちんと教育するメンター制度を導入し、休職・退職する社員を減らすことに成功しています。野村證券などもそう。病気になる前の対策も大切です」(東京女学館大学国際教養学部教授・西山昭彦氏)

 社会保険労務士の資格を持つ島林法律事務所の神内伸浩弁護士は、最近、労務管理についてアドバイスをした会社で、こんな社員の話を耳にして驚いたという。

「あるIT企業に勤める入社3年目の20代の女性ですが、彼女も典型的な新型うつで、無断欠勤が1ヵ月も続くなど、ひどい状態だったので、産業医の意見も踏まえて退職勧奨するよう進言しました。

 そもそも企業と社員との労働契約というのは、労働者が労働力を提供し、使用者がその対価として賃金を支払うという契約なので、就業規則できちんと記しておけば、退職させることも可能なのです。

 けれども、退職勧奨をしたら、彼女が『どうしても辞めたくない。なんとかがんばります』と言い出したのだそうです。念を押しても『大丈夫』というから、働かせてみたら、毎朝定時に出社するし、何の問題もなくなった。逆に会社の人事の方から『辞めさせるつもりで厳しく言ったら治っちゃって。どうしたらいいですか』と相談を受けて、困ってしまいました」

魔法のような診断書

 追い詰められると普通に働くことができる---病気というにはあまりにも不自然だ。このように、生活保護の不正受給問題と同様、「権利ばかりを主張し、楽して利を取る」という人々が増殖している時代背景こそが、新型うつの問題ではないだろうか。

「極端なケースですが、会社をサボりたいがために、うつを偽る人もいると思います。軽い症状が出る新型うつの人も実際いますが、症状を偽る人は、〝偽装新型うつ〟と言ってもいいかもしれません」(『「新型うつ病」のデタラメ』の著者でなかまクリニック院長の中嶋聡医師)

 うつ病への理解が広まったことは非難すべきことではないが、ビジネスライターの吉田典史氏は、「新型うつが注目されすぎ、症状を偽る人まで出てくると、従来型のうつ患者も十把一絡げにされてしまって〝うつは単なる甘えだ〟と否定されかねず、気の毒でなりません」と懸念する。

 新型うつが増えている原因は他にもある。一つは、うつ病の診断方法(アメリカの精神医学会が作成した「DSM」というマニュアル)が一般化したことで、誰でも容易にうつ診断が可能になったことと、SSRIという副作用の少ない抗うつ薬が開発され、処方されやすくなったこと。さらに、診療報酬の問題もある。前出の吉野医師が、その構造を解説する。

「精神科の場合、今の診療報酬体系では患者さんにゆっくり話を聞いても割に合わないんです。たとえば、患者の話を5分以上聞くと診療報酬330点、つまり3300円の収入になる。ところが、30分以上話しても、点数は400点とそれほど変わらない。そうすると、病院が一番儲かるのは、患者の話を5分聞いて回転数を上げることになってしまう。これでは正確に症状を把握することはできないと思いますが。

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