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こんなときに「東電柏崎原発」再稼働計画かよ
日本も世界も変わったのに、
変わらないのはこの国の中枢だけ(2)
柏崎刈羽原発〔PHOTO〕gettyimages

 本気でやるつもり これで政権が潰れても知ったことではない 国民の意見には聞く耳を持たない これぞ原子力ムラの常識

すべてはカネのため

「東京電力は福島原発事故の容疑者のような存在で、しかも公的資金を投入されている〝禁治産者〟。それなのに国民の生命や安全を考えず、儲けのために柏崎刈羽原発の再稼働に踏み出そうとしているのですから許されません。政府も財界も儲けるために協力しているだけ。政官財の癒着です」(ルポライター・鎌田慧氏)

 東電が策定し、経産省が認定した「総合特別事業計画」。今後の組織改革や事業運営など、東電の将来的なあり方をまとめた青写真だ。あらましは、全68ページの「総合特別事業計画の概要」にまとめられているが、そこに以下の一文がごく小さな文字で差し込まれている。まるで見つけられないことを願うかのように。

〈柏崎刈羽原子力発電所については、今後、安全・安心を確保しつつ、地元の御理解をいただくことが大前提ではあるが、今回の申請における3年間の原価算定期間においては、2013年4月から順次再起動がなされるものと仮定して原価を算定〉(傍点・編集部)

 つまり東電は、停止または点検中の柏崎刈羽原発1~7号機(新潟県)を来春から「順次再起動」させるという前提のもとで事業計画を作成したわけだ。今年7月1日から家庭向け電気料金を10・28%値上げするというのも、原発再稼働が前提になっている。

 東電はまた、原発の再稼働が行われなかった場合、家庭向け電気料金は15・87%の値上げが必要になるという試算まで公表している。東電の原発再稼働を認めなければ利用者の負担はさらに増える—東電は国民生活を人質にして、原発再稼働を目論んでいるのだ。

 なぜ、東電はそうまでして再稼働にこだわるのか。「再稼働について、銀行や政府の要求があった」と、東電関係者が内情を漏らす。

「事業を継続していくためには、つまり金融機関からおカネを借りるためには、柏崎刈羽原発の再稼働と電気料金の値上げはセットでマストでした。国と金融機関と東電の三者の話の中で、それがなければカネは貸せないということになったのが正直なところなんです」

 だが、柏崎刈羽原発はこれまで何度もトラブルが報じられてきた〝不良施設〟であることを忘れてはいけない。'02年と'07年には炉心隔壁のひび割れなどの情報隠蔽が発覚。'07年の中越沖地震では、微量ながらも放射性物質が漏洩した。さらに同年、原発の近くに活断層があるという調査結果を隠していたことも明らかになっている。このようないわくつきの原発を、あの東電がカネのために動かそうとしていることは、3・11を経験した我々にとって正気の沙汰とは思えない。

 事故の当事者ではない関西電力の大飯原発再稼働でさえ、地震対策の不備が指摘され、その安全性が疑問視されている。福島第一原発の原発事故を受けてつくられた安全対策85項目のうち、大飯原発はまだ31もの項目が完了していないのだから当然だろう。施設の直下にある断層の再調査に関しては、「予定なし」という無責任さだ。それでも夏の電力需要に間に合わないということで、再稼働ありきで強引にすすめる原子力ムラのやり方に国民の批判が高まっている現状がある。

 その状況下で、さも当たり前のように柏崎刈羽原発が来年春には再稼働していて、だからカネを貸してください、電気料金も最低限の値上げで済みますという東電。まともな神経の持ち主なら、怒りを覚えるに違いない。東大名誉教授の井野博満氏はこう言う。

「そもそも福島第一原発は、津波でやられたのか、それとも揺れの段階で壊れていたのか、まだ原因が分かっていません。それなのに、津波対策だけで柏崎刈羽原発を再稼働しようとしている。地震については、考慮されていないのです」

 柏崎刈羽原発の付近には多数の活断層がある。地震対策は、当然、万全でなければいけない。ところが現実は、そうなってはいない。井野氏が続ける。

「東日本大震災でマグニチュード(M)9・0が記録されたばかりだというのに、東電が柏崎刈羽原発で想定している地震はM7クラス止まりです。原発付近の活断層が動けば、もっと大きな地震が起こる可能性がある。神戸大学名誉教授の石橋克彦さんら地震学者は、M7・8から8の地震が起こり得ると警鐘を鳴らしています。東電は、最低でも東日本大震災並みのM9を想定すべきなのに、彼らは『地震の想定はM7であり、原子炉はそれに耐えられる』としか言わないのです」

 東電の身勝手な計画とそれを追認した国に対して、地元にも不信感が渦巻く。柏崎市の市議、矢部忠夫氏が、思いの丈をこう話す。

「地元議会や住民に何の説明もなく、一方的に来年度から順次再稼働したいと東電が言い、国がそれを認定した形になっている。そこまで地元をないがしろにするのかと、東電、国の態度に憤りを感じています。

 運転を再開するのであれば、少なくとも柏崎刈羽原発の健全性、および耐震安全性評価を改めてから検討するのが最低条件でしょう。ところがそうした方針すら出ていない中で、いきなり来年度から運転再開なんて、ありえないし、当然認められるものではない」

 原発のある自治体が、国や電力会社などから注ぎこまれるカネで潤ってきたことは否定できない。だが、そうして恩恵を受けてきた住民でさえ、この再稼働計画には首を傾げる。

 柏崎市内でホテルを長年営むオーナーが漏らす。

「お客さんの8割は原発絡み。そのお客さんが激減しているから、そりゃ再稼働はしてもらいたいですよ。

 ただ、福島第一原発の事故前は『原発は安全』という言葉を信じていたけど、今は考え方が変わりました。何よりも不安なのは、あの事故を引き起こした東電が原発を動かすということ。東電に任せて大丈夫なのかと思ってしまいます」

 こうした批判や反対が出てくるのは、東電も百も承知のはずだ。にもかかわらず、強引に再稼働に動くのは、先述のように再稼働しないと銀行からカネが借りられず経営が破綻するという「経済的」理由からだ。

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