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 毎年、この時期になると公表される報告書がある。「政策評価の実施状況等の国会報告」がそれで、各省庁が自らの政策・事業について行った「政策評価」をまとめたものである。

 政策評価とは、ざっくりいえば、省庁自らが「事業仕分け」をしているようなもの。時事通信は今年の政策評価についてこんな記事を書いている。

「各省が2011年度に実施した政策評価の結果をまとめ、公表した。事業採択後5年を経過しても未着手か、10年を経過しても完了していない公共事業720事業のうち、国土交通省など3省の17事業が中止か休止となった。総事業費ベースでは計2746億円で、このうち将来的に使わなくなった残事業費は2267億円だった」

 記事を読んでぶったまげたのは、(1)事業採択後5年を経過しても未着手か10年を経過しても完了していない公共事業が720事業もあるということ、(2)720事業のうち中止か休止になったのが17事業しかないという記述の2つだ。

 まず(1)について、これはマスコミが総務省からの公表資料をよく読まずに書いたのだろう。問題の720事業は、報告書の原文では「未着手・未了の事業等」として書かれている数字であり、記者がなぜか「など」を書き飛ばしている。ケアレスミスだろうと読み飛ばしてはいけないのは、実はこの「など」にポイントがあるからである。

 少し具体的に見よう。報告書を見ると、720事業のうち572事業は国土交通省のもの。572事業のうち未着手は1事業、未完了は7事業で残り564事業は国土交通省が自主的に行ったと記されている。

 つまりはほとんどが「など」に含まれている事業。それなのに、報告書ではどうして「未着手・未了の事業等」と書くのか。

 ここがミソである。形式的には未着手・未了とはされていないものの、旧事業を廃止して新たに新事業として計上し、実質的に未着手・未了のものも含まれている可能性がある。官僚が悪さをしていそうな言葉なのだ。

 そして(2)である。中止か休止になったのが17事業とは720事業の約2%にすぎない。国の事業はもちろん税金が使われてきたわけで、いままでどんな感覚でそれを行っていたのか見識を疑うばかり。きっと720事業すべてを中止・休止にしてもなんら問題ないだろう。

 そのからくりは、だれが政策評価を行うのかという点にある。各省庁が所管する政策について第三者ではなく自らが評価するという仕組みなのだ。日本の各省庁は縦割りタコつぼ組織だ。公務員は各省庁に入ると一生その省庁で過ごす。天下り先もその省庁があっせんしてくれる。入省してから墓場まで各省庁が面倒をみる仕組みだ。だから、政策評価を自らの省庁で行えば、先輩が犯した失敗を後輩は失敗といえなくなる。そんなことをしたら、各省庁のムラ社会から排除されてしまうからだ。

 政策のPDCAサイクルというものがある。Plan(企画立案)、Do(実施)、Check(評価)、Action(企画立案への反映)を繰り返すことで政策の質を高めるのが本来の姿であるが、Checkが自画自賛になってしまっては、悪い政策の拡大再生産になってしまう。

 いま「省庁版事業仕分け」なるものがメディアを賑わせているが、「政策評価」の実態を見れば、単なるパフォーマンスに終わる結末がすでに見えている。

「週刊現代」2012年6月30日号より


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