[虎四ミーティング]
大熊清(前FC東京監督)<後編>「南アW杯、“ワントップ・本田”の舞台裏」

オシムと岡田の違い

二宮: 大熊さんはスタッフとして、岡田ジャパンの南アフリカW杯ベスト16進出を支えました。その前には(イビチャ・)オシム体制下でもコーチを務めています。オシムさんといえば、独特のサッカー哲学を持つ指導者です。率直な感想として、オシムさんはどんな人でしたか?
大熊: 学ぶことが多いし、やり甲斐もある。サッカーを見る面でも非常に勉強になりました。一方で戸惑った部分もありましたけれどね(苦笑)。

二宮: といいますと?
大熊: たとえば、練習でのメンバーの組分けにしても意図があるんです。それについて、私に質問してくることもありました。「この練習なら、どういうメンバーに分ける?」と。選手に考えさせる練習を課し、コーチにも考えさせる機会を与えてくれる方でしたね。

二宮: コーチに対してもですか?
大熊: そうなんです。組分けひとつにしても、私に意図があるかどうかを見ていたりする。とにかくチーム全体に「考える」を要求していたと感じます。選手に対しては、「走れ、走れ」と要求していましたが、ただ走ればいいというわけではありません。「スペースに入るタイミングを考えて走れ」とおっしゃっていました。

二宮: 2007年11月にオシムさんが体調を崩されて岡田(武史)さんが監督になられました。指揮官が替わればメンバーもサッカーのスタイルも変わります。戸惑いもあったのでは?
大熊: 確かに、ありました。ただ、日本人同士のほうがコミュニケーションはとりやすい。岡田さんとは面識もありましたので、そこまで深刻ではなかったですね。

二宮: オシムジャパンから岡田ジャパンになって一番変わったところは?
大熊: 基本的に人とボールが動くサッカーを志向している点は変わりませんでした。そうですね……守備については岡田さんのほうが細かかったように感じます。フランスW杯で、1度世界と戦ってやられている。その経験から、守備を大切にすることは常に心の中にあったのではないでしょうか。オシムさんは練習では言いませんでしたが、試合当日になるとマークの受け渡しなど守りについての指示を出していましたね。

二宮: 岡田さんは普段の練習から守備を徹底していたわけですね。
大熊: いや、徹底というほどではありませんが、ミーティングではよく守備について話をされていました。特に、こぼれ球への反応だったり、バイタルエリアの守り方だったりというのは強く意識していた。やはり、それらの部分を疎かにすると世界を相手にした場合、痛い目にあう。だから守備については非常にシビアでしたね。ただ、岡田さんの考えは守備一辺倒ということではありませんでした。「しっかりと守りながら、世界からどうやって点を獲っていくか」という、攻守が表裏一体したものでもありました。