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日本人はおとなし過ぎ、かつ、働きすぎ! もう少し自由に休暇が取れれば日本の景気はきっとよくなる!?
ヨーロッパの有給休暇の概念は日本とは全く違う!?〔PHOTO〕gettyimages

 休暇!

 学生の長女が半年の予定で東京にいる。ドイツの会社の日本法人でインターンをしているのだが、その彼女が「風邪を引いた」と電話をしてきた。「じゃあ、明日は会社を休んで、寝てなさい」と言う私に、「いやよ。そんなことをしたら、あと5日しかない有給休暇が減っちゃう」と不機嫌。

「だって、病気なんでしょ。なぜ有休を使わなければいけないの?」と私。すると、娘は一瞬の沈黙の後に、「ママ、日本ではそうなのよ!」と、ぶっちぎれた。「だから、皆、熱があって死にそうでも出勤するのよ。ママは何も知らないんだから!」

 それを聞いた私は、「ははー、外国人、しかもインターン生だから差別されているのだな」と考えたが、それは大きな間違いだった。

 そのあと、念のために日本の友人知人に問い合わせてみたら、「もちろん、病気の時は有休を使う」とか、「風邪で休むこと自体、なかなか言いにくい雰囲気がある」とか、「病休はそんなに軽くは取れない」とか、「有休を全部使った後で病気になったときは、欠勤として給料から差っ引かれた」とか、「風邪で堂々と病欠扱いにできるのは、一部上場の大会社とか、大手銀行だけじゃない?」とか、ドイツ人が聞いたら腰を抜かすような証言が多く得られたのである。

 思い返せば、私も昔、「日本では歯医者に行くのにも有休を使う」というようなことを書いた覚えがある。ところが、最近どうもドイツ呆けしたらしく、すっかり忘れてしまっていた。今頃、半日本人の娘に指摘されるとは、面目丸つぶれだ。

合計6週間休めるドイツ

 ドイツでは、どんな零細企業でも、病休と有休がごちゃ混ぜになることはない。具合が悪くて休みたいときは、電話1本でOK。そのまま最低2日(会社によっては3日)は休める。ただし、それ以上休まなければいけない場合は、医者の証明が必要になる。親切な医者なら気前よく、「5日の自宅療養が必要」などと書いてくれる。いずれにしても、病気の時に休むのは、労働者の当然の権利。「うちの夫は病気証明が出た途端に病気が治り、元気百倍になる」と言っていた知人もいた。

 というわけで、有休を1日でも病気のために犠牲にするドイツ人はいない。近所の小学校教師は、火急ではないが2週間ほどの入院が必要になった時、わざわざ夏休みが終わり、新学期が始まってから入院した。ドイツの教師は、夏休みはすべてが正式な休暇ではないが、実質的に登校することがないので、そのメリットをすべて消化してから病休を取ったわけだ。生徒がいい迷惑。

 一方、有給休暇は純粋な休暇だ。元々の意味は、日頃たまった疲れを取り、心身ともにリフレッシュして仕事に復帰するための英気を養うこと。しかし、これがドイツ人の興味の中枢となってすでに久しい。たいていの人は休暇中に旅行に出るので、休暇の前はどこへ行くかが話題になり、休暇の後はどうだったかが話題になる。当然、労働組合も、有休日数を1日でも増やすため戦っている。

 工場などの職場では、日本のお盆休みのように全員が一斉に休暇を取らなくてはいけないところもあるが、普通は、希望の日程を申し出て、同僚の希望と照らし合わせながら決めていく。メインの休暇は3週間まとめて取る人が多く、子供のいる家庭は学校のお休みに合わせて夏、また、子供のいない人はオフシーズンに取ることが多い。

 旅行ならそのほうが混まないし、宿も割安だ。休暇の配分だけは、他では融通の利かないドイツ人が、なぜか素晴らしく柔軟になり、スムーズに決めることのできる事柄の1つだ。たいてい年次初めに、休暇の大まかなタイムテーブルが決まる。

 3週間のメインの休暇の他は、残りの有休をチョビチョビと取る。クリスマスやイースターなど祝日の重なる時期に、何日かの有休を足して10日ぐらいのお休みにしたり、あるいは、家の壁のペンキ塗りとか、引っ越しとか、親が入院といったときに、1日~2日取ったり。有休は年間約30日あるので、土日を足すと、合計6週間休めることになる。

 3週間のメインの休暇のあいだ、びっちり3週間、旅行に出る人も多い。だから、本当にリフレッシュして職場に戻れるかどうかは、かなり怪しいところだ。日焼けはしているが、中身はくたびれている人も少なくない。

 いずれにしてもドイツ人は、休暇の旅が終わると、すぐに次の予定を立てはじめる。旅のクオリティーはピンからキリまであって、収入のあまりない人を対象にした格安のパッケージツアーもたくさん出回っている。職があって、ぜいたくを言わなければ、誰もが10日や20日は砂浜に寝転がって過ごせるというわけだ。

 これだけ休暇が多いので、誰がいても、いなくても、業務が滞らないようにするためのシステムは抜かりない。ドイツ人は整理整頓が恐ろしく上手で、どこの会社も棚にファイルが整然と並んでいるが、これはすべてをなるべくわかりやすくして、同僚の休暇のあいだの代行業務をスムーズにするための知恵だと、私は思っている。

 医者も夏にたいてい2~3週間はいなくなるが、知らずに電話をすると、留守電が緊急の場合の代行の医者を教えてくれる。つまりドイツでは、誰かがたいてい休暇中なので、それを前提とした代行システムが見事にできあがっているのだ。

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