木暮太一の「経済の仕組み」

アダム・スミスの「生きるヒント」 第1回
「格差を拡げる自由競争は是か非か?」

2012年06月22日(金) 木暮 太一
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 派遣切り、所得格差拡大、ブラック企業と過労死・・・。

 近年、様々な場面で、経済自由化がなされ、同時にそれに伴う「弊害」を訴える声が大きくなっています。

 多くの場面で、「自由主義経済は、利益至上主義で弱者を切り捨てる」「人々のモラルを低下させる」と考えられています。さらに一部では、利益を追求することが「悪」であるかのような社会主義的発想すら持ち上がっています。

 そして、私利私欲を追求することを「称賛」したアダム・スミスがその元凶であり、その流れを継ぐ経済学は、血の通っていない非情な論理であるかのような言い方をされることがあります。

「経済学の父」アダム・スミス(1723-1790)

 競争や利益の追求が、いまのギスギスした社会を作り上げたのだと考えている人々も多く、それが「TPP反対」「格差是正のための税制改訂」の声に表れています。また最近では「競争に負けた子どもがかわいそう」という理由で、運動会の徒競走を、手をつないで行わせる学校もあるようです。手をつないで走れば、優劣はつかず、傷つく人がいない、という考えのようです。

 しかし、多くのビジネスパーソンが理解している通り、競争や利益の追求自体が悪いことなのではありません。競争がなければ、商品の改良は行われませんし、会社が利益を追求しなければ、仕事のスピードは相当遅くなるでしょう。その結果として、現在私たちが享受しているような「便利な社会」は、実現されなかったはずです。

 感覚としては、競争や利益の追求は必要、と理解しながらも、「なぜそう言えるのか?」「住みにくい社会をつくったのは、『競争』『利益追求』ではないのか?」と問われると、論理的な反論ができない方が多いのではないでしょうか?

 現代の経済を支えるためには、競争が不可欠です。他人・他社と競争することで、よりよいサービスが生まれ、改善が促されるのです。しかし、一般的な批判に見られるように、社会的な弊害が競争によってもたらされているような印象を受けるのもまた事実です。

 これにはどう答えるべきか?

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