メディア・マスコミ
ハゲタカファンドから実業家に転売され「オーナーが自己利益のために意見を表明する場」となった米地方紙。その実態は日本の大新聞と瓜二つ!?
どこかの誰かとそっくり(?)なメディア王ルパート・マードック 〔PHOTO〕gettyimages

 メキシコと国境を接するカリフォルニア州サンディエゴ。ここで発行される唯一の日刊紙UTサンディエゴ(旧サンディエゴ・ユニオン・トリビューン)が激震に見舞われている。数年でオーナー(社主)が2度も入れ替わり、紙面内容が様変わりしているのだ。

 新聞社がまるで商品のように売買されるアメリカ。それと比べると日本の新聞界は別世界のようだ。オーナーが入れ替わることはめったになく、経営は安定している。「経営の独立性=編集の独立性」と見なす経営者は多い。だが、経営側の意向を反映して紙面が編集されるという点では、実はUTサンディエゴとそっくりだ。

 まずはUTサンディエゴの過去数年を振り返っておこう。

 1928年以来のオーナーであるコプリー家が2009年、同紙の売却に踏み切った。買い手は、機関投資家や富裕個人から資金を預かって運用する買収ファンド「プラチナム・エクイティ」。買収ファンドは、日本のメディア業界では「ハゲタカファンド」と毛嫌いされがちだ。

 2年後の2011年、プラチナム・エクイティは同紙を転売した。今度の買い手は、サンディエゴの不動産業者ダグラス・マンチェスターだ。サンディエゴ市内に高くそびえる高級ホテル「サンディエゴ・マリオット・マーキス&マリーナ」を所有している実業家である。

 2010年9月2日付の当コラム「なぜ買収ファンドが調査報道NPOを資金支援するのか」でも書いたように、プラチナムによる買収をきっかけにユニオン・トリビューン(今年1月からUTサンディエゴへ名称変更)の編集局内では高コストの調査報道班は消滅した。調査報道NPO(民間非営利団体)としてスピンオフ(分離・独立)したのだ。

オーナーの一存で紙面内容が様変わりする

 オーナーが「ハゲタカファンド」から実業家へ切り替わったことでUTサンディエゴはどうなったのか。ニューヨーク・タイムズのメディア担当コラムニストであるデビッド・カーの言葉を借りれば、「UTサンディエゴはオーナーが自己利益のために意見を表明する場」になった。

 UTサンディエゴの新オーナーは筋金入りの反「大きな政府」、反増税、反同性愛であると同時に、サンディエゴの中心部に巨大なアメフト競技場を建設する計画を支持するなど再開発推進派である。コラム上でカーは以下の「経営側による編集介入」事例を挙げている。

*1面を使ってアメフト競技場建設推進論を報道。土地を管理するサンディエゴ港湾局が動かないと、資金絡みで同港湾局の不正を糾弾する記事を掲載する。

*スポーツ担当のベテランコラムニストがアメフト競技場建設に否定的な記事を書く。すると、このコラムニストは編集局長室に呼び出され、その場で解雇される。

*選挙前に、論説面に加えてニュース面でも保守派・再開発推進派候補に肩入れする報道を展開。新オーナーが支持する市長候補については1面で社説を掲載する。

 新聞のオーナーが入れ替わるのが日常茶飯事であるアメリカでは、新しいオーナーの一存で紙面内容が様変わりすることがある。インターネットの普及や2008年金融危機の影響で身売りを強いられる新聞社が続出していることから、なおさらである。

 たとえば有力経済紙ウォールストリート・ジャーナルを発行するダウ・ジョーンズ。1世紀近くにわたってバンクロフト家がオーナーとして君臨していたが、2007年にメディア王ルパート・マードック率いるニューズ・コーポレーションへ同家は持ち株を売却。それ以降、紙面上では「マードック色」が強く出ている。

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