「植物による土壌浄化」が消えて、「表土削り取り」が先行するのはなぜか?除染事業予算で「農業土木利権」復活を目論む農水省の思惑

 農林水産省が進める農地の除染事業を疑問視する声が渦巻いている。

 問題の除染政策は、「農地除染対策実証事業」として、昨年度の第3次補正予算で22億円の予算が計上されたもの。疑問視されているのは、その中身が「表土のはぎ取り」などの土木事業に偏り過ぎている点である。

 というのは、他の目的で利用されている土地と異なり、農地の場合、肥沃な表土をはぎ取ってしまうと農地として活用できなくなる可能性が高く、農家への2次的な所得補償のコスト増大が懸念されるからである。

 対案として、地中から汚染物質を吸い取る効果が高く、バイオエタノール発電の燃料になる作物を植えて除染を進める「植物による土壌浄化技術(ファイトレメディエーション)」の確立を急ぐべきだと主張する専門家も存在する。

 さらに、「農水省が2次的な人災まで懸念される施策に突き進む背景として、農業土木利権の復活を目指す動きがある」(日本経団連関係者)と指摘する向きもあり、除染事業の政策決定過程をガラス張りにすることが強く求められそうだ。

農水省の施策はいずれも農業土木的手法

 農水省が昨年12月に公表した「平成23年度農林水産関係補正予算(第3号)の概要」によると、「農地除染対策実証事業」は、東京電力・福島第一原子力発電所の事故によって広い範囲で土壌が汚染されたことに対応し、「開発された農地除染技術を様々な現地条件において施工レベルで実証、適用可能な対策工法として確立」するというものだ。

 ただ、その対象となっている除染技術は、①表土の削り取り、②水による土壌撹柈・除去、③反転耕(汚染された土壌を地下深く埋め込むもの)---の3つ。いずれも農業土木的な手法となっている。

農水省 平成23年度農林水産関係補正予算(第3号)の概要より

 農水省のこうした偏った施策の背景にあるとみられるのは、被災から半年が経った昨年9月に、やはり同省が福島県の数ヵ所で行った試験結果を踏まえて公表した「農地土壌の放射性物質除去技術について」というプレスリリースだ。

 それによると、約4cmの「基本的な表土削り取り」により「土壌のセシウム濃度が75%減」、「固化剤を用いた削り取り」により同じく「82%減」、「水による土壌撹柈・除去」が同じく「39%減」と農業土木技術を用いた除染が高い成果を収めたのに対して、ヒマワリを用いた除染は「単位面積当たりの吸収量は、作付時の土壌の放射性セシウムの約1/2000であり、効果は小さい」と結論付けている。

 この結果を踏まえて、農水省は、「農地除染対策実証事業」の「~5000Bq」「5000~10000Bq」「10000~25000Bq」「25000Bq~」4区分すべてにおいて、畑や水田で土木技術型の除染を進めることが適当であるとの方針を示していた。

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