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インサイドレポート孤立無援の大阪市長はこうしてハメられた 原発再稼働は考え直せ!それでも橋下徹この男以外に日本の未来を決められる政治家がいるのか

「停電が起きれば、すべて橋下徹の責任である」。巧妙な情報操作の前に、名物市長もついに妥協を余儀なくされた。だがそれは敗北ではない。この国のシステムに対する、新たな戦いの始まりなのだ。

 しばしの空白期間を置き、6月4日にツイッターを再開した橋下徹大阪市長は、その140字足らずの短文の中に、悔しさを滲ませているようだった。

〈週刊現代さん、これまでの応援エールは正直うれしいですが、僕はそんな器ではありません。そして今回ばかりはちょっと恥ずかしいですね。僕も大飯再稼働に加担したのですから〉

 野田佳彦政権は、かねてから議論になっていた関西電力・大飯原発(福井県)の再稼働に向けて動き出した。これまで橋下氏は、

「安全性を誰も確認していないのに、再稼働など許されない」「国の統治システムが崩壊している」「こんなことを許すなら、民主党政権を倒さねばならない」

 と、強烈に批判を続けてきたが、その橋下氏が、あっさり折れてしまった。

 5月30日に、橋下氏ら関西地域の首長が集まる「関西広域連合」が、「暫定的な安全判断」という条件付きながら、大飯原発の再稼働を事実上、容認。その声明発表の当事者の一人となった橋下氏は、

「正直、負けたと言われても仕方がない」

 と語り、6月4日には、久々に再開したツイッターで、冒頭のように本誌報道にも触れつつ、その忸怩たる内心を漏らしたのだ。

 これは、飛ぶ鳥を落とす勢いで支持を拡大してきた橋下氏にとって、初めての失敗、蹉跌となるのか。

 実際、長らく反対していながら、いきなり再稼働容認に転んだように見える今回の件に対しては、厳しい見方が多い。

「今回の再稼働容認では、橋下さんの短所が出てしまったかもしれません。世論の方向を掴み、瞬間的に先手必勝の判断をするのが彼の長所。しかし今回に限っては、原発が動かないことで産業界からどんな反応が起きるか、それがどんな世論となって現れるのかという総合的な判断ができなかったように思います」(政治評論家・浅川博忠氏)

 地元・大阪でも、橋下氏への批判と失望の声は出始めている。

「こう言っちゃなんだけど、橋下徹も鳩山由紀夫元首相とやっていることは同じですよ。選挙の公約に等しい扱いだった再稼働反対を反故にしちゃったわけだから。今回は厳しいね。私が地元回りをしても、『何をやっとるねん』と、橋下さんのイメージダウンが始まっていますわ」(大阪維新の会所属の府議会議員の一人)

 在阪テレビ局の中には、これまで橋下支持一辺倒だったのに、手のひらを返したように批判を始めた番組もある。「敗北」発言後の記者会見でも、記者からは「変節したのか」「有権者の期待になぜ応えないのか」などと厳しい質問が飛び、珍しく橋下氏が、くどくど言い訳をする場面も見られた。

 だが、本誌はあえて言おう。橋下氏は決して「変節」したわけではない、と。

電力ムラの総攻撃

 これは、本誌の思い込みなどではない。橋下氏とその周辺は、脱原発に向けた「第2ステージに向かう」と語っており、決してその〝旗〟を降ろしたというわけではない。

 何より、今回の再稼働容認は、橋下氏にしてみれば「ハメられた」に等しい。

 再稼働反対でツッパリを続ける橋下氏は、政府や霞が関、電力会社にとっては、毟り取って捨てたい目の上のタンコブである。したがって、難攻不落・大坂城の外堀がいつの間にか埋め立てられていたように、橋下氏は巧妙な手段で孤立無援に追い込まれ、妥協を余儀なくされていった。

「橋下市長が再稼働を容認せざるを得なくなった理由の一つに、『トヨタ自動車』の存在があると言われています。大飯原発が再稼働しないと電力が足りず、関西の産業界がダメージを受けると言われてきましたが、実は、関西電力ではなく中部電力管内に本社や工場があるトヨタの存在を無視できなかったというのです」(全国紙経済部記者)

 関西電力は昨年来、東海地方を管轄する中部電力から電力を融通してもらっていた。ところがその中部電力は、管内のトヨタ自動車に対し大幅な節電要請をしており、そのせいでトヨタは、工場の稼働率を下げるなど犠牲を強いられた。

「節電要請をしておきながら電力を関電に融通していたと後で聞いて、トヨタ側が激怒した。そのため、今年は中電から関電への配電が厳しい情勢になった。同時に、日本を代表する企業であるトヨタにこれ以上の犠牲を強いるのは、産業界としても罷りならん、という圧力があったといいます」(民主党閣僚経験者)

 もっともらしい説である。日本産業界の牽引車であるトヨタが困るとなれば、橋下氏も迷わざるを得ない。

 ところが、「その情報の出所は経産省サイドのリークのようです」(全国紙大阪市政担当記者)と聞くと、どうにもキナ臭い。

「経産省はトヨタを言い訳に使っていますが、彼らが恐れているのはトヨタの業績ではなく、関電の経営危機です。関電はこのまま原発を動かさないと、今年は火力発電の燃料調達費などで約1兆円の赤字が出る。

 さらに、もうすぐ美浜原発の2号機が耐用年数(40年)の限界を迎えるため、本来は廃炉にしなければならない。それによる減損処理などを加えると、債務超過に陥る可能性が高い」(民主党政務三役)

 ただでさえ、野田政権は不景気の真っ只中での消費税増税をゴリ押し中。その上、東京電力に加えて関西電力でも電力料金が値上げとなり、しかも関電までが東電同様に国有化される事態になれば、野田政権も経産省も、世論の猛批判に押し潰されてしまう。

「経産省だけではありません。関電まで国費を投入するハメに陥るのは、財務省にとっても大問題です。電力会社の危機でこれ以上、電気料金が上がれば、消費税アップもますます実現しにくくなります。まさに、霞が関と電力ムラが一体になって『電力不足』を演出し、さまざまなチャンネルを使って橋下氏周辺の切り崩しを実行したのです」(前出・民主党三役)

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