雑誌
"世界恐慌"を乗り越えるための全情報(3)
スクープインタビューマネーとマーケットを熟知する男 ジム・ロジャーズ
「どこの国の国債も買ってはいけない」

 いまは1929年の世界恐慌前夜と酷似している。自分を守ってくれるのはリアルな資産だけ私たちは農業従事者になったほうがいい

 いまマーケットは6月17日に迫ったギリシャ再選挙の話題で持ちきりだが、私に言わせれば、選挙結果がどっちに転ぼうと関係ない。いずれにしてもヨーロッパの危機は悪化し続ける運命にある。

 ギリシャが抱える根本的な問題は債務が増え続けていることにあり、これを処理できない限り、選挙で誰が勝っても問題は悪化していくだけだからだ。

 これからヨーロッパではさらなる破産と混乱が起きるだろう。ヨーロッパが世界最大の経済圏であることを考えると、影響はアメリカにも日本にも中国にも、つまりは世界中すべての国に及ぶ。そして経済がどんどん減速し、破産が続いていくのだ。

 私は今後10年以内に、ヨーロッパだけでなく、世界中で多くの国が破産していくと見ている。アメリカでさえも破産するかもしれない。破産とはつまり、デフォルト(債務不履行)になることであり、あるいは巨大なインフレ(物価上昇)になることだ。

 最終的には、1929年の世界恐慌のような状態になるだろう。いつそうなるかはわからない。来年かもしれないし、2014年、2020年かもしれない。しかし、世界恐慌のような状況が再び来てしまうことは確かだ。誰かが、すぐに問題解決に当たらない限りは。

 ジム・ロジャーズ。投資家。1970年代にジョージ・ソロス氏とともに「クォンタム・ファンド」を設立し、約10年間で4200%もの驚異的な利回りを上げた。現在はシンガポールを拠点に、投資活動を続ける。

 そんな氏が本誌の独占インタビューに応じた。世界経済、日本経済の見通しと、われわれにとっていま必要な資産防衛の極意を語ってくれた。

 莫大な債務を抱えているのはギリシャだけではない。ヨーロッパの各国、アメリカ、日本も同じように債務の問題を負っている。

 各国の政府は、この50年間ずっと、ただただ予算をばら撒き続けてきた。おカネがないのに、債務を膨らませる(国債を刷って借金をする)ことで政府支出を増やして、経済を拡大させてきた。これがもう限界に近づいてきている。

 歴史を振り返ると、世界経済は4〜6年周期でリセッション(景気後退)に見舞われていることがわかる。そして2002年より、2008年のほうが、より悪質なリセッションになっている。これはリセッションのたびに債務が膨れ上がり、それがまたリセッションを呼ぶという悪循環の罠にはまっているからだ。

 どこの国の政府も、債務問題を解決する方法を見つけられていない。だから、同じことが、これから数百年間も繰り返し続いていくのだろう。

世界が終わる日

 1970年代に非常に似てきたと思わないか。つまりはインフレとともにリセッションが起きる、スタッグフレーションが巻き起こる状況のことだ。これからインフレとリセッションが同時に起きる事態はさらに進んでいくと思う。

 だから---。

 私は株に関しては「売り」を徹底している。アメリカ、ヨーロッパや一部の新興国の株を空売りしている。

 さらにいえば、私はどこの国の国債にも投資していない。世界中の国が債務を増やし続けている中で、さらにはインフレーションがやってくる危険性がある中で、国債を保有するという選択肢はとうてい選べないからだ。

 ではこれから日本はどうなっていくのか。

 ヨーロッパの危機が悪化したら、日本の国債が次のターゲットにされるだろう。金利が跳ね上がり、インフレが起きるだろう。

 そして日本経済は10年後、20年後にいまよりずっと悪い状況になっていることは容易に想像がつく。人口減少がいまよりずっと進んでいる上、債務はさらに膨れ上がっていく。この2つの問題を解決できない限り、日本は衰退する一方だ。

 いま日本政府がやるべきことは財政支出を大きく削減すること。子供を増やす政策を打つか、あるいは移民を受け入れることも必要になってくる。

 それができなければ、日本は高齢者だらけの国になる。生活水準も落ち続けていくだろう。その間に債務は増え続けていくので、必ずや貧しい国になっていく。

 日本人が資産を守るにはどうすればいいのかについて最後にお話ししよう。

 世界経済が悪化していく過程で、各国政府は紙幣をばら撒くようになる。紙幣の価値はどんどん下がっていくことになる。そのとき、自分を守ってくれるのはリアルな資産だけだ。

 では、リアルな資産とはなにか。

 私自身、シルバー(銀)やライス(米)といったコモディティ(エネルギー、貴金属、農産物などの商品のこと)を所有している。こうしたコモディティこそが、リアルな資産だ。

 これからの時代、株のディーラーは職をなくすことになるだろう。先ほどいったように、いつか世界恐慌のような状況がやってくることがわかっている中で、株は軒並み下落する運命になるからだ。

 一方で農業従事者たちがランボルギーニ(イタリアの超高級車)を乗り回すことになる。農業従事者だけではない。採鉱業者、エネルギー業者など、リアルな商品を生み出す人たちこそが「ベストな仕事をしている」と賞賛される時代がやってくる。

 私たちは農業従事者になったほうがいい。私自身、日本のお金持ちの農家と結婚したいくらいだ(笑)。

 2013年、2014年の世界経済がいまより良くなっているとはまったく思わない。最悪の場合、世界が終わってしまうほどに世界経済が崩壊する危険性もある。すべて、増え続ける債務問題に対処してこなかった、世界中の政治家たちのせいだ。

 世界中の政府は、真剣に支出削減に取り組むべきだ。もちろん支出のカットは痛みを伴う。高速道路の建設にかかわる仕事をしてきた人など、いままで政府の予算に頼ってきた人たちは苦しむことになるだろう。

 これまで政府の予算に頼ってきた人たちは、もっと強くなって、自分自身を頼り、自分自身の足で立つようにならなければならない。われわれは危機に対する準備を始めなければいけない。さもなければ、世界経済がカタストロフィー(破局)に陥る中で、資産を失っていくだけだ。

【取材・飯塚真紀子(在米ジャーナリスト)】

「週刊現代」2012年6月23日号より

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら