「東大までの人」と「東大からの人」第2弾 vol.1 はこちらをご覧ください。
早稲田に行けばよかった
東大が毎年行っている「学生生活実態調査」に、「東大生の不安・悩み」と題する「特殊分析」が掲載され始めたのは2年前のこと。その理由については、<現代の東大生の現実を知る上でとても重要なテーマだから>と書かれている。
休日の東大本郷キャンパスは、人まばら分析の冒頭では、<青年本来の不安や悩みをもつことはいうまでもない>と前置きしながら、<東大生ゆえの不安や悩みもある。おそらく、東大生の悩みや不安は、他大学の学生に比較して学業や進路に関する内容が多くなっている>と指摘している。
同調査によれば、<希望に満ちて大学に入学した学生がまず直面するのは、大学の学業の難しさ>である。カリキュラムの消化が「多少困難」、あるいは「できない」と答えた学生は約22%で、その理由に「講義の内容が高度すぎて理解できない科目がある」を挙げた学生が約49%もいる。<約5人に一人の学生が授業の内容についていくのに困難を感じており、これも学生の悩みや不安の種となっている>というのだ。
文学部の卒業生(29歳)は、そんな「できない」20%の一人だった。彼は愛知県の公立高校から文学部に合格したが、入学早々に思い知らされたのは、同級生の呑み込みの早さだった。
フランス語の授業では、みなが1回で流暢(りゅうちょう)に発音できるところを、自分だけ5分間も「ボンジュール」とやらされる。一日かけて3ページ読むのがやっとだったヘーゲル哲学の教科書を、同級生は3時間で読み込み、上手に要約する。モノが違うと愕然とした。
「周りは開成(東京都)、灘(兵庫県)、筑駒(筑波大学附属駒場、東京都)などの"メジャーリーガーばかりですが、僕は地方無名校という"3Aマイナー"の選手。同じグラウンドで戦えるはずがないのに、たまたまホームランを打ってメジャーに来てしまった。早稲田に行っていれば、と後悔しました」
鹿児島県の公立高校から経済学部に入った卒業生28歳)は、議論についていけないことに焦った、と言う。彼女は東大に入ったのだから好きな勉強を目一杯やろうと、少人数講義を履修した。テーマは戦争論。講義の最初に「戦争と人権」について書かれた英語論文が配付され、10分後にディスカッションを開始するという。
3枚ほどのペーパーだが、10分経っても彼女が読めたのはほんの十数行。だが、周りはペーパーを読み込み白熱した議論を始めている。途中からは「(『戦争論』の著者であるプロイセン将軍の)クラウゼヴィッツが言っていたのは・・・」「歴史修正主義という観点から見れば・・・」と、ペーパーには書かれていない議論に「脱線」するが、彼女以外の10名は、どんな話題にも難なくついていった。
「私は、『君はどう思う』と聞かれないかとビクビクしていました。英語で議論をふっかける人もいて、もう止めて、と逃げ出したくなった。最近、そのペーパーが出てきて辞書片手に読んでみたのですが、今でも私には理解できませんでした」
この両者には共通点がある。それは地方校出身ということだ。それも、久留米附設(福岡県)、ラ・サール(鹿児島県)、岡崎(愛知県)など毎年東大合格者を大量に出す高校と違い、年に一人か数年に一人出すくらいの"お受験無名校"の卒業生なのである。
「車輪組」と「裏口組」
東大入学前に行われる2大イベントの存在を知っている受験生は少ない。その一つが、「クラスオリエンテーション(クラオリ)」。親睦を目的に、オリターと呼ばれる2年生が企画・主導し、新入生たちと1泊2日の旅行に出掛けるものだ。
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