官々愕々
バラマキ金権政治の復活

 5月29日、自民党政策会議で「国土強靭化基本法案」が了承された。「多極分散型国土の形成」、「国土の均衡ある発展」など、懐かしい言葉が並ぶ。全国津々浦々に公共事業をバラマキますというとんでもない法案だが、一野党である自民党の選挙対策だから何も目くじら立てるほどのこともないように見える。しかし、それは大間違いだ。

 民主党は'09年総選挙のマニフェストで「コンクリートから人へ」と訴えた。しかし、そのための政策は当初の公共事業予算18%減や八ッ場ダム凍結などに限定される。その後、補正予算のバラマキや震災復興予算などで、このスローガンは完全に有名無実化した。さらに最近は、昔の自民党と同じ土建国家復活にまい進しているように見える。八ッ場ダム凍結解除、整備新幹線建設推進、高速道路建設凍結解除など、金権政治の象徴・小沢一郎元代表排除に力を入れる一方で、公共事業バラマキの金権政治が復活しているのは皮肉な話だ。

 消費税増税の実現には参議院で自民党の協力が不可欠だ。中堅改革派議員の大量落選で完全な長老支配となった自民党を落とすにはどうしたらよいか。先週号でも指摘したが、自民党は民主党の政策を批判することよりも、民主党政権の利権のおこぼれにありつくことばかりに執心している。

 整備新幹線建設が進む北陸、北海道、九州の三地域にはいずれも自民党長老政治家が未だに君臨している。彼らが一番喜ぶのが整備新幹線建設である。高速道路建設も同党有力派閥領袖の利権である。こうしたバラマキ政策は国交省がお膳立てしても財務省がかなりの抵抗を示すのが常だが、今回は、むしろこの動きの裏には財務官僚がいると言われている。消費税増税を通すために自民党長老の協力を得る一番良い餌は何かを熟知する財務官僚がシナリオを描いているというのである。

 それだけではない。大型公共事業は財務官僚の利権の最大の源泉でもある。各事業の予算の査定権。これは財務省にとっての最大利権、言わば「核心的利益」である。今や税収が激減し、歳出の大半は社会保障に流れて行く。それは公共事業予算などの裁量的な予算の査定権縮小に直結する。主計局官僚から見れば、まさに危機的状況だ。だからこそ、消費税を増税してその一部をバラマキ予算に充てなければならない。新幹線や高速道路の建設は10年単位の事業だ。今決めておけば、今後10年以上にわたって自分達の利権が保証されるのである。

 そこで、野田政権をうまくたぶらかして消費税増税に命を賭けると言わせて追い込み、その実現のための自民党懐柔策の妙手として、ゼネコンへのバラマキ予算を認めさせる。
この構造をさらに利用したい自民党の長老が出してきた冒頭の国土強靭化基本法案も、財務省は消費税増税とさらなる予算査定の利権拡大のためには、通した方がよいと考えているのではないか。そして、この動きをさらに具体化するために国交省はインフラ5ヵ年計画を策定中だ。そこには地震対策と称してバラマキ公共事業が並ぶ。

 小沢vs.野田のドタバタ劇に気を取られているうちに、財務省・国交省、民主・自民とゼネコン業界、不滅のトライアングルの利権だけが拡大して行く。そうならないように、国民はしっかり監視して行かなければならない。

「週刊現代」2012年6月23日号より

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