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 5月29日の2年国債入札において、珍しい事故が起こった。日銀の事務トラブルにより2年国債の入札が一旦取り止めになって、再入札となったのである。

 日銀の説明では、業務局の職員が誤って別の年限の国債入札画面に入札参加者毎の応札限度額を入力したため、本来のデータが更新されず、応札できない参加者が発生したという。入力作業は3人の職員で行いチェックしているが、見落としたのだ。

 何度起きても不思議でないと思ってしまうミスだ。もし「有事」に同じようなミスが発生すれば、国債マーケットに不信感を与え、よもやの売り浴びせを引き起こすこともあるかもしれない。民間金融機関のシステムトラブルを偉そうに指導してきた日銀は自らのミスに言い訳できないだろう。同じく民間金融機関を散々叱ってきた金融庁には、日銀のことも叱って欲しい。

 本コラムは、ミスをした日銀を虐めるだけではない。再入札の結果、不思議なこともわかったので、それもあわせて書いておこう。

 再入札結果は財務省ホームページに記載されている。それをみると、応募額24兆2699億円、募入決定額2兆4780億円とあり、10倍近くの申し込みがあり、再入札が好調のうちに終了したことがわかる。それはけっこうなことだが、募入最低価格100円00銭0厘(募入最高利回り=0.100%)、募入平均価格100円00銭0厘(募入平均利回り=0.100%)となっている。

 国債の入札では、多くの民間金融機関が希望買い入れ価格を書いて日銀に札を入れている。日銀がそれを集計して財務省に報告し、財務省は価格の高いものから応札していく。価格が高いとその分国債発行収入が多くなるので、財務省としては当然だ。

 ある価格までで財務省が必要な財政収入が得られると、その価格が「足切り価格」「募入最低価格」となり、それより下の希望買い入れ価格で入札した民間金融機関は購入できないわけだ。と同時に、国債を購入できた民間金融機関の平均の希望買い入れ価格が「募入平均価格」として公表される。

 今回の再入札では募入最低価格と募入平均価格がぴたり厘の桁まで100円00銭0厘で一致、つまり、民間金融機関はみんな同じ札を入れたのだ。たしかに今安全資産を求めて国債の人気はすごい。わずか0.1%でも2年国債は飛ぶように売れている。しかし、数十社の民間金融機関が談合でもしない限り同じ価格で入札するはずがない。

 再入札という緊急事態で、当局が談合を要請したこともありえるが、背景には同じ29日に行われた日銀による、金融機関の保有する国債買い入れ入札7100億円の影響があると思われる。

 同じ日に、財務省が2兆4000億円の売り出しを行い、日銀が7100億円の買い入れを行ったのだ。再入札は時間外だったので、日銀の買い入れ価格をそのまま国債入札価格としたわけだ。

 財務省の発行した国債と日銀が買い入れた国債は厳密には同じものでない。しかし、経済的には同種のものだ。

 なんのことはない。財務省が国債を発行したのと同じ日に日銀は同種のものを引き受けていたのだ。日銀は国債引き受けをしたらハイパーインフレになると脅しながら、実際にはすでに行っている。しかしハイパーインフレにはなっていない。いかに日銀がでたらめか。事務ミスはそれも暴露してしまった。

「週刊現代」2012年6月23日号より


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