野村にメスを入れる佐渡賢一SEC委員長、「増資インサイダー」の連続摘発で「腐敗土壌」を浄化できるか
金融庁から課徴金勧告を受けた野村證券本社〔PHOTO〕gettyimages

 証券投資を経験した投資家なら、誰もがインサイダー情報の貴重さがわかる。

 決算数字や新商品の開発、業務提携やM&Aの情報を事前に入手できたら・・・。

 こう夢想しない人はいない。だから許せないのが、「増資インサイダー」である。

 上場企業が大規模増資を発表すれば、投資家は希薄化で株が暴落するのを見越して「売り」をかけようとする。だが、時、既に遅し。発表の前段階で情報を入手、売りをかけて確実な利益を手にする連中がいる。

 彼らを「増資インサイダー」と呼ぶが、日本ではこの重要情報の発表前に株価がストンと下がる現象が常態化、一般の投資家は「証券会社が機関投資家を優遇、情報を漏らしているんだろう」と、諦めてきた。

 この悪しき「証券市場の慣行」に、証券取引等監視委員会(SEC)がメスを入れる覚悟を固めたのは昨年の年初である。

 その時、私は「『増資マフィア』の次は『増資インサイダー』の摘発がSECの課題」と題して、本コラム(昨年1月20日付)で記事にした。

 以来、1年半に及ぶ海外調査も含む徹底捜査の末、SECは三井住友信託銀行、あすかアセットマネジメントにインサイダー取引の疑いがあったとして、金融庁に課徴金を課すよう勧告した。また、6月8日には、同じ容疑で米ファーストニューヨーク・セキュリティーズに課徴金勧告を行った。

「26歳の女性営業担当が勝手にやった」

 対象銘柄は、三井住友信託銀行が国際石油開発帝石とみずほフィナンシャルグループ、あすかアセットマネジメントが日本板硝子、ファーストニューヨークが東京電力である。情報を漏らしたのは主幹事証券で、日本板硝子を除く3件は野村證券である。

 インサイダー取引は、増資など企業の重要事項の決定に関与した当事者と、その人物から、直接、情報を得た「一次情報受領者」のみが罰則の対象となる。

 課徴金勧告を受けた3社は、いずれも増資に関与した当事者から1次情報を得たとして処分されたわけだが、現行法上、情報を漏えいした証券会社を罪に問うことはできない。今回の連続摘発を経て、規制強化が検討されているが、「情報の漏えい元」を叩かなければ意味がないとして、金融庁は野村證券に対して行政処分することを検討している。

 こうしたSECの動きを野村證券は、当初、舐めていた。

 公募増資情報を伝えたかどうかは、しょせん「言った」「言わない」の話。SECにわかるわけがないし、イザとなれば「担当者が勝手にやったこと」と逃げればいい---。

 実際、最初の国際石油開発帝石のインサイダー情報は、「26歳の女性営業担当が勝手にやった」と説明し、SECの怒りを買った。

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