国民生活への影響と緊急性を考えれば、消費税率よりもはるかに重要なのは年金問題だ!
年金問題こそ「待ったなし」ではないのか・・・。

 消費税率引き上げに向けた民主・自民・公明三党の修正協議が急ピッチで進んでいる。野田首相は、民主党の政策を殆ど全て放棄してでも、消費税率の引き上げを決めようとしている。政策論的には、彼は、今や、民主党よりもむしろ自民党の党首に近い。現実的には、財務省の代理人と見える。

 しかし、問題の大きさを比較した場合、消費税は、たとえば「年金」よりも重要で緊急性を帯びた問題なのだろうか?

 財政再建は「待ったなし」だというが、財政赤字の弊害であるはずの長期金利上昇、インフレ、円安は、何れも現実のものとなっていないではないか。むしろデフレと円高こそが緊急に解決すべき経済問題だろう。

 他方、公的年金に関しては想定をはるかに上回る急ピッチで積立金が減っており、数年以内に「このままでは保たない」と誰もが確信する状況に陥ることだろう。AIJ問題でクローズアップされた積立不足の厚生年金基金をはじめとした企業年金の問題は、明らかに「ただちに」取り組まなければならない課題だ。

 年金改革を捨てるか或いは先送りにしてでも、消費増税に取り組むというのは、問題の大小の点からも、緊急性の点からも、明らかに本末転倒だと言える。

最低保証年金は、まずまずの選択肢

 では、年金にはどういった問題があるのか。

 年金については、多くのテーマが残っており、重要性・緊急性の順序を判断するのは必ずしも簡単なことではないが、次のような問題を挙げることが出来る。

(1)最低保障年金創設などを含む民主党案をベースとするか、自民党が主張するように現行の枠組みをベースとするか
(2)現行制度の延長にあって、厚生年金(主に民間サラリーマンが対象)、共済年金(主に公務員が対象)の「年金一元化」をどのように実行するか
(3)現行制度で年金財政を保たせるために何を行うか
(4)企業年金制度、特に厚生年金基金をどうするか
(5)年金の徴収・支給の仕組みをどうするか。たとえば「歳入庁」を作るなど

 今後、無年金・低年金から生活保護に流れる高齢者が相当のペースで増大することが予想される。つまり年金は生活保護と一体で考えるべきだし、その仕組みはシンプルな方がよい。

 社会保障の仕組みを、ベーシックインカムのような年金・生活保護・雇用保険などを統合したセーフティーネットに、抜本的に作り替えることができればそれが一番望ましいと筆者は考えるが、仕組みが簡素になることに官僚が大反対するので、残念ながらこれは実現しまい。

 だとすれば、どのみち年金と生活保護との間の条件調整は必要になるが、民主党が主張してきた最低保障年金は、それ自体としては、経済弱者対策を兼ねつつ現行制度よりもシンプルな仕組みなので、まずまずの選択肢であるようにも思う。

 しかし、移行措置のあり方によっては、たとえば、現行制度と新制度が併存する時間が数十年にわたって続き、多くの国民にとって、とてもシンプルとは思えないものになる可能性がある。

 旧制度は、新規の保険料の受け入れこそ閉鎖されるものの、制度自体はしばらく継続するので、新制度の運営は複雑なものとなる。大幅な手直しが可能なら、基礎年金と厚生年金に相当する部分(いわゆる一階と二階)に関しては、現行制度の手直しで対応していく方法が現実的なのかもしれない。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら