グローバル化に背を向ける日本の株式市場は「窒息寸前」 ~金融大臣交代でIFRS(国際会計基準)導入問題はどこへ行く?
低迷が続く日本の株価市場〔PHOTO〕gettyimages

 野田佳彦内閣の改造で、自見庄三郎・郵政金融担当相が交代した。今回の改造は問責決議を受けた田中直紀・防衛相や前田武志・国土交通相ら問題閣僚の事実上の更迭が中心だっただけに、自見金融相の交代は意外感があった。

 自見氏は医師で、金融にはズブの素人だが、なぜか会計基準にはご執心だった。国際会計基準IFRSについては、2009年に企業会計審議会が「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」をまとめ、2012年をメドに日本企業に強制適用するかどうかを判断するとされているが、自見氏は大臣として、昨年6月にその先送りを表明していた。

 もっとも、それは大臣としての「挨拶」という扱いに過ぎず、審議会としては何ら正式に決定した「答申」や「報告」を出したわけではない。自見氏は2009年の中間報告を反故にすべく、審議会にIFRS反対派の臨時委員を一気に10人任命。それ以来、1年にわたって議論が繰り返されている。

 IFRS反対派は、何とか6月中に新しい「中間報告」をまとめさせようと自見大臣を通じて金融庁の事務当局に繰り返し指示をしてきた模様だ。その自見氏が大臣を外れたのである。反IFRS派からすれば、9回表、勝利目前で頼みのエースが降板してしまったに等しいだろう。

 後任には松下忠洋・復興副大臣が就いた。松下氏は同じ国民新党所属だが、長く経済産業副大臣を務めたこともあり、自見氏に比べて経済に通じている。果たして松下大臣はIFRSにどんな姿勢で臨むのか。

「国を開く」というのが基本姿勢

 就任記者会見でIFRSについて語っている。任命に当たって首相から指示された6項目の5番目にIFRSが含まれていたのだという。

 松下氏はこう語っている。

「国際会計基準の導入に関して、国際的な動向を踏まえつつ産業界や中小企業の動向にも配慮して、我が国の方針を総合的に検討するということでございました」

 つまり、首相からは「総合的に検討する」ことを求められたというのだ。

 首相の指示は重い。一大臣の意向でその指示を無視することは不可能だ。もちろん、首相指示といっても、野田首相自身が思いついた事を言っているわけではない。首相のスタッフである官僚が振り付けたものだ。霞が関では言葉の使い方1つにも意味がある。

 方針を「総合的に検討する」というのは、あくまで検討するのであって、方針を「決める」わけでも「まとめる」わけでもない。松下氏が首相の言葉を正確に語っているとすれば、そうそう簡単に結論は出ないということである。

 また、松下氏はこうも言っている。

「様々なヨーロッパの考え方、そして日本の考え方、そしてまたアメリカの対応、それぞれ時とともに色々な動きがあるようでございます。もう少し勉強して、しっかりと前大臣の考え方も確認しておきたい、そう考えています」

 自見氏の考え方も確認するとしているものの、前大臣の方針を踏襲するとは言っていない。また、「勉強して」と言っている大臣に、就任から数週間のうちに「結論」を持っていくような事務方はまずいない。霞が関用語でいえば、「そんな乱暴な事はできない」というのが普通の感覚なのである。

 反IFRS派は自見氏を通じて、新しい中間報告をまとめるよう松下氏に働きかけているようだ。副大臣を務めていた経済産業省にもIFRS反対派がおり、そのルートを通じて反IFRS路線を堅持させようという思いもあるようだ。

 だが、松下氏は経産副大臣として新成長戦略の取りまとめを行ったほか、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加を推進してきた人物である。「国を開く」というのが基本姿勢の政治家とみていい。かつての国民新党代表だった亀井静香氏や自見氏とは色合いがかなり異なるのだ。また、松下氏は人の話をよく聞く好人物として知られ、官僚の信頼も厚い。

 もともと民主党の経済政策の基本は「国を開く」というキャッチフレーズの下、グローバル化を推進することにある。これは経産省や金融庁などの官僚たちの考えと重なる。民主党政権の中にも、自見氏のIFRS反対に眉をひそめていた人は少なくない。そんな思いが首相指示に表れたのかもしれない。

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