ドイツ
「EURO 2012」がついに開幕!! 暴動・八百長・人権問題に信用不安---それでも結局、本気でサッカーを犠牲にできる人間なんてヨーロッパにはいないのだ。
4日にポーランド入りし練習を公開したドイツ代表チーム〔PHOTO〕gettyimages

 6月8日、サッカーのヨーロッパ選手権が始まる。ヨーロッパでは、ワールドカップにも劣らない特大イベントだ。ドイツ人も皆、すでに期待を胸にそわそわしている。今年は、ポーランドとウクライナが開催地。東欧でこんなに大きなスポーツ・イベントが行われるのは初めてだ。

 ただ、サッカーについては、最近、いくつかあまり芳しくないニュースがある。まずは5月15日、デュッセルドルフのスタジアムでの暴動騒ぎ。Herthaベルリン対Fortunaデュッセルドルフの試合で延長戦が終わりかけたころ、観客席で、あるはずのない発煙弾がモクモクと白煙を上げ、さらに、めらめら燃える打ち上げ花火が火炎弾のように飛び交い始めた。辺りはすでに暗いので、戦争勃発のような異様な雰囲気だ。

 そればかりか、興奮したファンが次々と、まだ試合の終わらない、しかも火の手の上がるフィールドに飛び降りて走り始めたから、混乱は最高潮。かなり酔っぱらっていないとできない芸当だ。スタジアムでは、アルコール飲料は、発煙弾や打ち上げ火炎弾同様、持ち込み禁止のはずなのに。

 実は、この前日にはカールスルーエという町で、やはり騒ぎがあった。応援しているチームの敗退に怒ったファンが、試合のあとチームの事務所を襲って警官と乱闘となり、76人が負傷したのだ。そのうち18人は、気の毒にも警官。

 サッカーをめぐる暴動はまだまだある。その数日前にはイスタンブールでトルコのチャンピオンシップをかけた試合があったが、そこでも負けチームのファンが脱線。同日、スイスでは反対に、勝ちチームのファンが大暴れした。

サッカー協会に警備費を負担してもらう?

 日本人には想像できないだろうが、ヨーロッパのフーリガンは凶暴だ。プロレスラーのような体格のうえ、スキンヘッドで目つきが悪く、日頃はいったい何をしている人たちだろうかといぶかしくなる。ひょっとすると生業は強盗かもしれない。昼ごろ続々と集まってくるときには、すでにビール瓶を手にしており、スタジアム入りするまで飲みまくり、管を巻いたり、行き会った相手チームのサポーターに喧嘩を売ったりと、とにかく始末が悪い。

 シュトゥットガルトでも、連邦リーグの試合のある日は、中央駅や繁華街は厳重な警備だ。電車から降りてくるファンたちは、チームカラーのマフラーや、おそろいのTシャツ姿で、すでに大声で歌ったりわめいたりしている。それを、どこから集まったのかと思うほど大勢の機動隊が見張る。この様子を見るたびに、本来の無邪気なサッカーファンが気の毒になる。ファンの多くは、気のいいお父さんとサッカー選手に憧れている子供たちなのだ。

 そこで、この不幸な事態をどうにかしようと、5月30日、ドイツ各州の内務大臣が集まり、対策を話し合った。立見席を廃止しようとか、チケットを記名にしようとか、スタジアム以外の電車やバスの中でもアルコールを禁止しようとか。そのうちに、危険人物にセンサー付きの足環を付けようとか、観客の顔写真を記録しようというアイデアも出て、フーリガンについて話し合っているのか、殺人犯について話し合っているのか、わからなくなった。

 しかし、警官の増員、そして、入場時の持ち込み検査を厳しくする以外には、あまり効果的な対策はないように思う。

 一方、サッカー協会にもっと警備費を負担してもらおうという案も出ている。警官の動員には年間少なくとも1億ユーロが掛かっているそうだ。考えてみれば、わずかな暴力ファンのために、こんなに莫大な税金をつぎ込まなければならないのは確かに理不尽だ。1軍のサッカーチームは大金持ちのうえ、とくに今年はテレビ中継権の改定により、6億5千万ユーロもの増収となるそうだ。つまり、お金は唸るほどある。フーリガンにチケットを売るなら、警備の1億ユーロぐらい出しても罰は当たらないだろう。

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