ドン小西 第1回 「ボルタレンの座薬をぶち込んで熱を下げ、ラムとシガーで語り明かしたハバナの夜」

 <店主前曰>

 ドン小西とはじめて顔を合わせたのは、ハバナ・シガーの旅に行くために成田空港のロビーで待ち合わせたときのことだった。その日のドン小西は、いつものブラウン管から飛び出すような元気はなく、顔色は冴えなく沈んでいた。葉巻の旅に行くために片付けてきた仕事がタイトだったのだろう。JALの機内でドンは死んだように爆睡していた。

 憧れのハバナのホテルに着いた。ホテルのシガーショップへ行くと日本で1本4千円以上するコイーバが、980円で売っていた。興奮したわたしは10本買って旅行用のユミドールに入れた。ついでにキューバン・ラムも1本買った。日本なら3万円は下らないビンテージものが、なんと3千円で売っていたのだ。早速、部屋で一杯ひっかけてシガーを吸った。シエスタを愉しんでウトウトしていると、ドン小西から電話がかかってきた。

「シマジさん、そっちの部屋に行っていいかしら」

「もちろん」とわたしが答えると、ドンはすっかり元気を取り戻してやってきた。

「さっきまで熱が38.5度あったんだけど、ケツからボルタレンをぶち込んだら37度まで下がった。もう大丈夫。飲みましょう」

「大丈夫? 無理せず寝ていたほうがいいんじゃないの」

「いやいや、このチャンスにシマジさんとゆっくり話をしたい。こんな機会はそうはない。おれは『甘い生活』もちゃんと読んでいるんだ。こんなとこでシマジさんに弱みをみせたら、あとで何を書かれるかわかったものじゃない」と言った。

 ドンはパルタガスのロブストを取り出して吸いはじめた。久しぶりにわたしはマンリーな男に出会ったような気がした。