現実味帯びる「普天間」固定化
在日米軍再編ロードマップ見直しの中間報告[沖縄]

在日米軍再編の行程表見直しの中間報告について記者の質問に答える玄葉光一郎外相(左)と田中直紀防衛相=首相官邸で4月27日

 日米両政府が在日米軍再編のロードマップ(行程表)見直しの中間報告を発表した。在沖縄米海兵隊のグアム移転などを米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設と切り離すことが正式に決定。アジア太平洋地域で中国に対抗するため米海兵隊の即応部隊を分散配置するのが特徴だ。一方、普天間飛行場は引き続き同県名護市辺野古への移設方針が明記されたが、米議会では移設のメドが付かないことへのいら立ちから「辺野古以外」の案もくすぶる。辺野古移設への機運は急速にしぼんでおり、「普天間固定化」は現実のものとなりつつある。

 ロードマップの見直し方針が明らかになった今年2月、玄葉光一郎外相が昨年12月の日米外相会談でクリントン米国務長官に持ちかけたのがきっかけだとする情報が流れた。しかし、日米関係筋は「玄葉氏が主導したという話は外務省が流したウソ。米国から通告されたというのが真相だ」と明かす。

 実際、米国は海洋進出を強める中国に対抗するため、昨年11月にオバマ大統領がオーストラリア北部ダーウィンで演説し、アジア太平洋が安全保障上の最優先地域だと表明。今年1月にはオバマ演説を踏襲した新国防戦略を発表した。普天間問題のこうちゃく状態にしびれを切らした米国が、新国防戦略の要となる在沖海兵隊グアム移転を先行実施する方針に転換したというのが実態だ。

 今回の中間報告でまず注目すべき点は、グアムに移転させる在沖海兵隊の部隊構成を抜本的に見直したことだ。06年のロードマップでは基本的に戦闘部隊を沖縄に残し、司令部部隊をグアムに移す計画だった。今回は戦闘部隊と司令部部隊で構成され、常時即応態勢にある「海兵空陸任務部隊(MAGTF=マグタフ)」を沖縄のほか、グアム、ハワイ、豪州ダーウィンに分散配置する方針に転換した。中国の弾道ミサイルなどによる攻撃で壊滅的ダメージを受けるリスクを回避し、反撃しやすくすることで抑止力を強化するのが狙いだ。グアムには沖縄からの約4000人を含む計約5000人を駐留させ、戦略的な拠点として整備を進める。

 両政府は中間報告で、自衛隊と米軍による共同訓練、共同の警戒監視・偵察活動を「動的防衛協力」として推進する方針を打ち出し、グアムや米領北マリアナ諸島テニアンに日米共同使用を想定した訓練場を整備する案を挙げた。動的防衛協力とは日米が連携して部隊を運用することで抑止力強化を図ることを意味する新しい考え方で、背景には「両政府とも財政難で、効率よく抑止力を強化する必要がある」(防衛省幹部)との事情がある。中間報告は12年末までに具体的な協力分野を特定するとしており、自衛隊幹部は「沖縄の自衛隊の態勢も考えていかなければならない。これからが正念場だ」と語る。

 総額102・7億ドルだったグアム移転経費は、部隊構成の変更などで86億ドルに縮減。日本の財政支出は当時の米国の物価ベースで上限28億ドルとした09年のグアム移転協定を踏襲した。グアムやテニアンなどでの訓練場整備に拠出する資金もグアム移転協定の範囲内で対応する。

 ロードマップ見直し協議で抑止力やカネとともに大きな焦点になったのが沖縄の基地負担軽減だ。米側は在沖海兵隊の定員を従来の約1万8000人から約1万9000人に修正。このうち約9000人が国外移転すると中間報告に明記されたため、沖縄に残留する規模は06年ロードマップと同じ水準の約1万人が保たれることになった。ただ、実際に駐留している「実員」ははっきりしないのが実情で、沖縄側が負担軽減を実感できるかどうかは沖縄本島中南部の米軍5施設・区域の返還の進展にかかっている。

 沖縄の米軍基地は96年の日米特別行動委員会(SACO)合意で11施設計5000ヘクタールの返還が決まって以降、実現したのはわずか8%。5施設・区域の返還が在沖海兵隊のグアム移転とともに普天間移設と切り離す方針が明らかになった際、沖縄県の仲井真弘多知事は「いい方向に進み始めたという期待はある」と評価した。政府は負担軽減を進めることで沖縄県側から辺野古移設への容認姿勢を引き出す戦略を描いており、12年末までに返還を急ぎたいところだ。

 しかし、中間報告は5施設・区域を13地区に分割して3段階で返還する方針を明記したものの、地元自治体からは「細切れに返されても利用価値がない」などと早くも失望の声が上がっている。13地区571ヘクタールの88%が「県内への機能移転」か「海兵隊のグアム移転」が返還の条件とされ、「基地負担の軽減を具体的に目に見える形で進めていく」(野田佳彦首相)ためのハードルは高い。「移転先にとっては負担増になる。そう簡単にうまくいかない」(防衛省幹部)との見方が支配的だ。

移設先「辺野古」以外も

 中間報告の発表直前、土壇場で今後の行く末を暗示する出来事があった。米国防予算編成で大きな権限を持つ上院軍事委員会のレビン委員長らがパネッタ国防長官に「説明が不十分」とする書簡を送り、発表に待ったをかけたのだ。レビン氏は普天間問題で「辺野古移設は非現実的」として、米軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)への統合案を主張する有力議員で、両政府は中間報告で「辺野古以外」にも余地を残す文言修正を余儀なくされた。日本国内でも与党の一部議員が嘉手納統合案を模索しており、火だねを抱えることになった。

 09年の政権交代の際、鳩山由紀夫元首相が普天間の移設先を「最低でも県外」と表明した影響は根強く、仲井真知事をはじめ、沖縄県の主要な政党・県連は軒並み「県外移設」を主張。防衛省は沖縄県名護市辺野古への移設に向けた環境影響評価(アセスメント)の手続きを今年秋ごろに終えるとみられるが、公有水面埋め立て許可を申請できる見通しは立たない。

 普天間問題は96年に橋本龍太郎首相(当時)とモンデール駐日米大使(同)が飛行場返還に合意して以来16年間解決できていない「大きなトゲ」(外務省幹部)。移設のメドが付かないまま「切り離し」が決まったことで「固定化」の懸念は強まったが、政府は打開策を見いだせずにいる。

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