いつまでも「サイダー、ごくごく」ではいいわけがない!「増資インサイダー疑惑」に見る日本株市場への「憂鬱」

 私は「草食投資隊」という珍妙な名前で全国ツアーを行なっています。コモンズ投信の渋沢会長とセゾン投信の中野社長と私と3人で、投資をすることの意義や意味、投資なくして未来が開けないことなど、投資にまつわる話をなるべくわかりやすく平易に語ろうと全国行脚をしています。

 なぜ草食?それは投資が肉食のイメージがあるからです。食うか食われるかというイメージ。でも本来の投資は未来を開くことです。長期投資の素晴らしさについて語っています。

 北は北海道から南は沖縄まで。全国津々浦々、勉強会を開いて、各地で語り合っています。のべ50カ所以上回りました。そして感じるのは、実際に投資のイメージが非常によろしくない、ということです。

投資ってお金でお金を生むことじゃない。そういうのちょっとね。
投資ってダーティーな感じがする
株式投資?まともな人がすることじゃないね
株って損するでしょ。つーかギャンブル?

これは全部とは言わないけれども、多くの人のイメージです。今の日本の社会を支えている株式会社の根幹のインフラである資本市場のイメージが物凄く悪い。そんな国の株式市場が上がっていくイメージがわかないのが正直なところです。

 土地に並ぶ重要な資産である株式市場を健全に支えようという意志がない国は、結果的に株式市場の価値が下がり、結果的にみんなで貧乏になってしまいます。今のところ、全員で自分たちが自分たちの首を絞めている状態です。

 とはいえ、一方で不信に拍車をかける事件が起きています。ひとつはAIJ投資顧問事件。2000億円もの年金がひとつの資産運用会社の不届きな行動によって消失してしまいました。もうひとつは、増資インサイダー事件です。

 増資インサイダー問題というのは年金消失問題に比べると被害金額がよくわからず、一見私たち生活者に影響を与えていないように感じている方が多いかもしれませんが、これはある意味AIJ投資顧問事件以上に大きな問題であると考えています。インサイダー事件は資本市場から泥棒をしているような行為であり、かつそれがプロ同士で行われているとしたら言語道断です。

 大型の公募増資が実施される場合に、その発表の後に株式市場でその株が下落をすることがよくあります。たとえば10%分株式を多く発行する場合に、その分だけ株券が増えるため、増えた分だけ会社の価値が薄くなるのです。それを希薄化(きはくか)といいます。

もちろん増資は必ずしも悪ではありません。成長をしている会社ならばその資金で工場を作ったり、研究開発投資に回したりすることでより成長できる場合もあるので、増資=悪、ではないし、増資=株価の下落、というわけではありません。ただ残念ながら、成長が期待できなくなった会社が、厳しくなった財務状況を改善するために苦し紛れに増資を行った場合は、増資をした割合よりも株価が下がることがあります。特に最近は成長企業の増資よりも財務を立て直したいという後ろ向きの増資が増えてきました。

 後ろ向きの会社が増資を行う発表をすると見事に株価が下がります。本当に株式市場は正直です。ところが以前から非常に不可解なことがよくありました。それは増資の発表の前に、突然にその会社の株が暴落をし、しかるのちに増資の発表がある、というケースが相次いだのです。

「日本はインサイダー天国」なのか

 東京電力、国際石油開発帝石、日本板硝子の銘柄で増資インサイダー取引をしていたという話があり、野村證券、JPモルガン証券、あすかアセットマネジメント、旧中央三井信託銀行などの名前が今のところ出ており、課徴金などの制裁が課せられたりしています。

 これらの銘柄はみて明らかというほどの下落ぶりで、当時から相場に携わっているものはみな「あからさまなインサイダー取引」と見ていました。実際に証券取引等監視委員会でも当時からクロであると認定していて、証拠を探していたと言われています。具体的にここでは書きませんが、非常に大規模な売買が発生しており、急速に株価が下落をしています。とても不自然です。誰かが増資を知っていたとしか言いようがありません。

 株価が下がると確信をすれば株券を借りてきて「空売り」をし、下がったところで株を買い戻して返せば、大きな利益を得ることが出ます。その行為そのものは何の問題もありません。しかし、それがインサイダー取引に基づくものであったならばそれは問題になります。

実際には海外のメディアでもたびたび指摘をされていたし、かつ現場にいるとそのような不可解な株式の下落をたびたび見てきました。このような不可解な取引は先程の銘柄だけでなく、小さい会社まで含めて実にたくさん存在しています。増資の発表の前だけでなく合併の発表前などに強烈に売られたり買われたりするのです。

 現場にいるファンドマネジャーの通常の感覚でいうと、外国人ファンドマネジャーが「日本はインサイダー天国」と言うのはわからなくないどころか、そんなことを嘆いているなんてナイーブだねと言いそうになるくらい日常化しているように感じています。

 そりゃ、あんた、投資ってダーティーでしょ。そんな現場にいてどうよ?知っているじゃない?あんたもダーティーって認めなよ。――という声があがるのも仕方がない。実際にはインサイダーは「サイダー」という隠語があって、「サイダーごくごく」なんて言葉もあるくらいで・・・。

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