中国
中国はもはや労働力大国ではない!? 改革開放開始から34年目の今、都市部はどこも「用工荒」
中国の都市部では今、改革開放路線の目覚しい成果と新たな課題が交錯する〔PHOTO〕gettyimages

 先日、わがオフィスに新入社員が入ってきて、夜に歓迎会を行った。場所は、中国最大の高級四川料理のチェーン店で、この夏に株式上場を控えている『俏江南』である。

 われわれは十数人で、店内の一番広い個室を取り、総経理(社長)が乾杯の音頭を行った。と、そこまではよかったが、その後、待てど暮らせど料理が運ばれてこない。一時間近く待たされたところで、さすがに歓迎会の幹事氏が業を煮やし、激烈な抗議に及んだ。

 ところが、その時の店側の回答が振るっていた。

「ウチも『用工荒』の影響で、コックが足りないんです。どうか勘弁してください」

 自宅近くのセブン・イレブン。朝方と夕刻には、店の外まではみ出さんばかりの長蛇の列ができる。東京のセブン・イレブンなら、2~3人の店員が同時に素早い手つきでレジを打っているが、こちらはたった一人。しかも、ちんたらモード丸出しで、レジを打った商品やつり銭は、投げてよこすこともある。少し疲れると、商品整理をするフリして、休憩モードに入ってしまう。

 ある時、「主任」を見つけたので、店のサービスについて、つい文句を言った。すると「主任」が嘆いて曰く、

「この『用工荒』の時代に、自給13元(1元≒12.5円)で働いてくれる北京の若者を見つけるだけで、ありがたいことなのです」

 北京最大のマッサージ・チェーン店「良子」。河南省出身の若い男女のマッサージ師が、朝10時から深夜2時まで、いつ何時訪れても、即座にキメ細かいマッサージを施してくれることで急成長してきた。

だが最近、異変が起きている。客が30分以上、平気で待たされ、しかもマッサージ師の質がガタ落ちしているのだ。店のフロア・マネージャーに聞くと、思わず愚痴をこぼした。

「『疲れる仕事はもう嫌だ』と言って辞めていくマッサージ師が後を絶たず、『用工荒』が深刻なんです。ウチは特に週末の夜が掻き入れ時だというのに、勝手に休んでデートに行ってしまうコもいる。2年前ならそんなことが1回でもあればクビにしていましたが、いまや宥めすかして働いてもらうしかない」

単純作業に耐えられない若者たち

 用工荒---人手不足が、北京のサービス業を直撃している。一人っ子政策世代のいまの中国の若者たちは、ストレスが溜まるサービス業に就きたがらないのだ。ちなみに若者は何をしているのかといえば、日本で言うフリーターやニートが急増している。

中国政府は「サービス業の発展」を第12次5ヵ年計画(2011年~2015年)の国家目標に定めた。だが、笛吹けど踊らずで、北京では逆にサービス業の空洞化が、このところ深刻化している。

 さらに深刻なのは、地方の製造業である。

 いまから2年前、四川省の省都・成都が、台湾最大の精密機器メーカー「富士康」の工場誘致に成功した。そこで12万人の工員を雇用し、世界のiPadの3分の2を、富士康成都工場で生産する予定だった。

 確かに工場立ち上げ当初は、12万人がフル稼働していた。だが一人辞め、二人辞め・・・と櫛の歯が折れるように工員が減っていき、いまやついに、半分の6万人になってしまった。

 もちろん、会社としては日々、必死に従業員募集をかけている。実際、一日平均の入社社員数は、3,000人~5,000人(!)にも上るという。だがそれを上回る数の工員たちが、毎日辞めていくのである。

 四川省は、8000万人もの「省民」を擁するので、当初は省政府が富士康に対し、12万人もの新規雇用を創出してくれたことに感謝し、省を挙げて雇用に協力することを約束した。だがいまになってみると、地方自治体の中に「富士康雇用促進チーム」を作ったはいいが、富士康の工員を集めるのに四苦八苦し、挙げ句に促進チームの面々まで次々に辞めていくという情けない状況に陥っている。

 四川省のある町は、「富士康雇用促進チーム」に特別ボーナス制度を導入した。それは、富士康に一人人材を送り込むごとに、送り込んだスタッフに、600元の特別ボーナスを支給する。その工員が2年間働き続けたら、さらに1000元のボーナスを支給する。逆に2年以内に辞めた場合、支給した600元のうち、500元を「罰金」として徴収するというものだ。

 町役場の公務員たちが、一般家庭を虱潰しに訪問し、「富士康に入りませんか!」と勧誘して回っているわけである。「まるで人狩りだ」「一社の民営企業のために町の税金ドロボーだ」などと逆風も受けているが、約束なのだから仕方ない。

 だが、そもそも誤算があったのだ。つまり、「80後」(1980年代生まれ)や「90後」(1990年代生まれ)の若者たちは、月給1,300元で、日々単純作業に従事することなど、耐えられないのである。

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