スポーツ

二宮清純レポート ヤクルト→楽天→統一セブンイレブン・ライオンズ(台湾)
鎌田祐哉 投手・33歳「炎はまだ燃えている」

2012年06月06日(水) 週刊現代
週刊現代

 その才能を、石川雅規は「ズバ抜けていた」と言い、古田敦也は「もったいない」と評する。かつて将来を嘱望された男は、いま台湾のマウンドに立っている。再び日本で投げる日を胸に描いて。

唯一の日本人選手

 薄っすらとアゴひげをたくわえたエースは試合後、マネジャーが差し出したミネラルウォーターを一気に飲み干した。5月だというのに南国特有の蒸し暑さがダグアウトを包む。

 日本では「こどもの日」にあたる5月5日、元東北楽天の鎌田祐哉がリーグ最多となる7勝目をあげた。24日現在、勝ち星は9まで伸び、防御率も1・45でリーグトップである。

 海の向こうの話だ。海の向こうといっても、もちろん米メジャーリーグではない。中華職業棒球大連盟(職棒)。要するに台湾プロ野球リーグである。鎌田は今年2月にテストを受け、かつて日本ハムなどでプレーした中島輝士が監督を務める統一セブンイレブン・ライオンズに入団した。

 台北の天母棒球場で行われた、この日の兄弟エレファンツ戦では新人王候補の林煜清に投げ勝った。7回9安打2失点とピリッとしなかったが要所を締めた。

「マウンドがしっくりこなかったけどゲームで修正できた。柱として先発ローテーションで回るのは、これまで経験してこなかったこと。それだけに充実感があります」

 日本人投手コーチのアドバイスも光った。広島と中日で通算78勝をあげた紀藤真琴である。'07、'08年には東北楽天の一軍投手コーチを務めた。

 6回表、ピンチの場面でマウンドに上がり、こう告げた。

「歩幅をもう1~2mm狭くしろ」

 ステップ幅を心持ち狭めることでボールに角度がつき、低めのストレートが甦った。

 目を見張った1球がある。6対2とライオンズが4点リードながら1死一、二塁の場面で鎌田は5番の周思斉を迎える。台湾代表にも名を連ねた左の好打者だ。

 この周に対し、追い込んでからヒザ元に得意のスライダーを投げ込み、見逃し三振を奪った。まるでジャックナイフのような切れ味だった。

「スライダーは僕の生命線。キャッチャーのサインに首を振って投げた。これが今日一番のボールでした」

 日焼けした顔をほころばせながら33歳は言った。

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