まんまと大飯原発再稼動にこぎつけた「原子力ムラ」。原子力行政健全化のため批判派は霞ヶ関、業界との「戦い方」を覚えろ!
関西電力の大飯原子力発電所〔PHOTO〕gettyimages

 野田佳彦政権が関西電力大飯原発3、4号機を再稼働させる方針を決めた。正式決定は来週に持ち越されたが、事実上の決定とみていい。

 それにしても、政府の姿勢はデタラメである。「安全を確認しなければ再稼働しない」と言っていたかと思えば「電力需給が逼迫する」と稼働の理由を変え、最後は「経済産業省の副大臣や政務官を現地に常駐させる」などと言い出した。

 原発に素人の政治家が現地に常駐したところで、安全確保にはなんの関係もないのは明白だ。「万が一、事故が起きた時に万全の対応をする」などと言うなら、本末転倒もいいところではないか。二度と事故が起きてはならないのだ。

議論のプロセスの法的根拠に疑問

 ふりかえれば、議論の出発点は「安全性の確認」だった。

 菅直人前政権は福島事故の後、2011年7月6日に突如、原発についてストレステスト(耐性試験)の実施を発表した。そもそも電力会社が実施するコンピュータ上のテストにどれほどの信頼性があるか疑問だが、それでも本格的なテストをしたら時間がかかるとみたのか、途中からテストの中身を簡易版の1次評価と本格的な2次評価に分けてしまった。

 1次評価は地震と津波に対する耐性をチェックするだけで、それ以外の事故シナリオは想定していない。たとえば、福島で実際に起きた水素爆発プロセスや電源喪失時のベント操作、火災の同時発生、テロへの対処などは考えていないのだ。

 福島事故への対応で無能力さをさらけ出した班目春樹原子力安全委員会委員長でさえ、大飯3、4号機が2012年3月23日に1次評価をパスした際に「1次だけでは不十分、2次までやるべき」と記者会見で釘を刺していた。

 これではとても国民の理解を得られないと考えたのか、野田政権は2012年4月3日に「新たな安全基準策」の策定を発表した。ところが、2日後に出てきた基準は電源車や電源ケーブルの配備とか消火ホースの分散配置、緊急時のマニュアル作成、ベント用の窒素ボンベ配備など、どこかの映画プロデューサーが思いつくような当たり前の話ばかりで、とても本格的な基準とは呼べないシロモノだった。

 それでも形を整え、なんとか再稼働にもっていきたい野田政権は今回の決定に際して、またまた「いまの国の基準は新しい原子力規制庁ができるまでの暫定基準」(細野豪志原発事故担当相)と言い出した。

 初めのストレステストから何度も安全の判断基準を変え、最後は政治家の現地常駐などという幼稚なスタンドプレーまで演出して、ようやく再稼働にこぎつけたという話である。こんなありさまで国民が信頼するわけがない。

 そもそも、政権が勝手に安全基準を決めたり変えたりして再稼働を議論する、というプロセス自体の法的根拠が極めてあやしい。原子力委員会および原子力安全委員会設置法で「安全の確保のための規制に関すること」は原子力安全委が「企画、審議し決定する」と決められているからだ。安全委をすっ飛ばして議論はできず、委員長の斑目が容認していないのは指摘したとおりである。

 さらに言えば、野田首相と3閣僚(+仙谷由人民主党政策調査会長代行)の会合が再稼働を議論し、野田が「私の責任で最終判断したい」と言うのも、法的根拠に疑問がある。原子炉規制法および電気事業法によれば、定期検査や原子炉の運転を認める権限は内閣総理大臣ではなく経済産業相にある。民主党政権は、この問題に限らず、政治判断と法的権限についての意識が低い。

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